コンビニ大手のローソンが株式市場から「退場」する。KDDIがTOB(株式公開買い付け)を行い、ローソンの株式50%を取得し、現在の親会社の三菱商事と共同経営する。これにより、セブンイレブン、ファミリーマートと合わせた“御三家”のすべてがコンビニ単体として上場企業の看板を下ろす。日本にコンビニが誕生して半世紀。上位3社の変遷を改めて振り返る。
ローソンには現在、三菱商事が50.1%出資し、子会社としている。2.1%を保有するKDDIは三菱商事以外の株主から残る株式を約5000億円で買い取る。TOBは4月にも始まり、1株あたりの買付価格は1万360円。TOB成立後、最終的に三菱商事とKDDIはローソンの株式を50%ずつ保有する。
KDDIは「au」ブランドの携帯事業を中核に、銀行、保険、旅行、デリバリーなどに幅広い領域に進出。一方、ローソンはコンビニを全国に約1万4600店を展開するほか、高級スーパー「成城石井」、チケット販売、映画館運営、旅行など広範な事業を手がける。KDDIはローソンの経営に乗り出し、「au経済圏」の拡大を目指す。
ローソンは1975年に総合スーパーのダイエーが「ダイエーローソン」を設立したことにさかのぼる。ローソンは米国発のコンビニブランド。その2年前の1973年にはイトーヨーカ堂が「ヨークセブン」を設立し、同じ米国生まれの「セブンイレブン」の国内展開に着手していた。
これに対し、日本発祥のコンビニブランドとして出発したのがファミリーマート。やはりライバルスーパーの西友ストアーが1973年に新規事業としてコンビニを立ち上げた。1970年代初めはまさに国内のコンビニ草創期だった。
ローソンの経営に三菱商事がかかわるようになったのは2000年。ローソンの親会社だったダイエーが経営危機に陥ったのがきっかけだ。ダイエーはかつて小売業で日本一の売上高を誇ったが、多角化などが裏目に出て凋落し、2013年にイオンの傘下に入った。
2017年には三菱商事がローソン株を追加取得し、子会社化。原料調達や流通、海外事業などをサポートしてきた。これまで持ち株比率は50%をわずかに超える程度にとどめ、ローソンの上場を維持してきた。
ただ、御三家のうち、ローソンは「3番手」が指定席。さらに業界全体で国内店舗数が頭打ちを迎える中、三菱商事として中長期な成長戦略を描くうえで異業種とのパートナーを必要としたようだ。今後、株主は三菱商事とKDDIの2社となるのに伴い、ローソンは2000年以来の上場(現在、東証プライム市場)にピリオドを打つ。
国内約2万1500店と断トツを誇る業界最大手のセブンイレブンも実は以前、上場していた。設立から6年後の1979年に東証2部に上場し、1981年に東証1部に昇格。この間、運営会社の社名もヨークセブンから、1978年にセブン‐イレブン・ジャパンに変更し、今日に至る。
エポックとなったのは2005年。本家の米国7‐イレブン(セブンイレブン)を買収し、北米での店舗網を獲得した。同時に、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの3社が持ち株会社「セブン&アイ・ホールディングス」を発足させたのに伴い、傘下に入った各社がそろって上場を廃止した経緯がある。
ただ、セブン&アイ・HDをめぐってはかねて海外投資ファンドがグループの稼ぎ頭であるコンビニ事業の分離・独立を求めており、将来的にコンビニ事業単体での再上場案が浮上する可能性も否定できない。
残るファミリーマートはどうか。国内約1万6000店で、業界2番手にある。
1981年に西友ストアーからコンビニ事業が独立し、運営会社のファミリーマートがスタート。1987年に東証2部(1989年に東証1部)に上場し、順調に歩んできた。母体の西友ストアーは当時の旧セゾングループ(西武グループの流通部門)で西武百貨店、パルコなどと並んで中核をなした。
ところが、バブル期の不動産・リゾート開発失敗によるセゾングループの不良債権処理のため、西友ストアーも保有するファミリーマート株式の売却を余儀なくされたのだ。
伊藤忠商事がファミリーマート株の約30%を取得し、筆頭株主になったのは1998年。そして2020年、伊藤忠のTOBによる完全子会社化に伴い上場を廃止した。
コンビニ準大手・中堅ではイオン系のミニストップ、中国地域が地盤のポプラ、一都三県を中心とするスリーエフが上場を維持している。
ポプラ、スリーエフの両社についてはローソンと資本関係をはじめ、共同店舗を運営するなど緊密な間柄にあり、今回、ローソンの経営にKDDIが加わることによる影響が注目される。
文:M&A Online