顧問先からのM&A相談は誰が受けたらよいか

alt
※画像はイメージです

Q:顧問先企業のオーナーから、後継者がいないので会社を誰かに譲りたいと相談されました。

金沢で父が30年前に開設した会計事務所を引き継いで経営しています。

父の代からの顧問先企業はご高齢の経営者が多く、先日もある会社から「引退をしたいが後継者がいない。どこか引き継いでくれる会社はないだろうか」というご相談をいただきました。しかも「体裁もあるので地元以外の会社で探してほしい」とのことです。

当事務所にとって、他エリアでのお相手探しは至難の業です。ほかの会計事務所の方々はM&A相談についてどのように対応されているのでしょうか? (石川県 会計事務所 N・Yさん)

A:顧問先企業からのM&A相談は、会計事務所の先生にこそご対応いただきたい。

この種のご相談は全国の会計事務所の先生方からたくさん頂いております。

経営者の多くは、事業売却に関する相談相手として、やはり長年のお付き合いがあり、会社の状態も知り尽くしている税務顧問の先生が最適であると考えてい らっしゃるようです(図)。

会計事務所にとって、顧問先企業のM&Aは顧問先数の減少につながりかねないという懸念があるかと思いますが、それを 理由に二の足を踏んでいても、後継者不在が解決することはなく、経営者は直接、専門会社や金融機関などへ依頼するか、廃業するかしかなくなってしまいます。

先生方の知らないところで譲渡されるような事態を避けるためにも、ご相談を受けたときには、先生方にイニシアチブをとっていただくことをお勧めします。すぐにM&A専門会社にご相談いただければ、最適な譲渡スキームの構築などを共同で行うことが可能です。

例えば会社分割方式を使えるような事案であれば、顧問先を減らさずに済むケースも出てきます。また、今回のお話のように他エリアのお相手との M&Aを望まれるケースでは、買い手企業より引き続き税務顧問を依頼されるケースもあります。M&A案件の全てが顧問先減少につながるわ けではありません。

以前、私が担当したM&A案件でも、会社分割で本業と不動産賃貸業とを分け、不動産事業(新設会社)は元の経営者が引き続き経営し、本業の会社 を株式譲渡したという事例がありました。この取引も税務顧問の先生を通じてご相談いただいた案件であり、先生は新設会社の税務顧問を引き続き行っていらっ しゃいます。

M&Aが成立するまでのプロセスには、財務諸表を含む資料の開示、買収監査への対応、各種税金の納付などがあり、税務顧問の先生なしには進めら れません。そして何より、ご相談の初期段階でのメリットやリスクの説明、売却意思の確認、M&Aアドバイザー選定の必要性などの助言は、長年にわ たり築かれてきた経営者との信頼関係や幅広い知識力があってこそ、なせることではないでしょうか。

後継者不在を理由に存在意義のある会社をなくさないため にも、M&Aについて前向きに考えていただければと思います。

M&A情報誌「SMART」より、 2014年7月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部