こどもの日にまつわる企業3選

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5月5日は「こどもの日」。少子化が進み、子供をターゲットにした業界は苦戦が続いている。半面、子供の数が減ったことで親や祖父母が1人の子供に使う金額は増えており、高額の商品やサービスが売れるという現象も。子供向けビジネスは悲喜こもごもだ。縮小する子供市場で生き残るためにM&Aで経営規模を拡大したり、新たな収益源を模索したりする企業も増えてきた。「食品」「子供服」「教育」の3業種から、積極的にM&A戦略を展開している企業を紹介する。

【食品】子供から大人まで国民食「カレー」の担い手 ハウス食品

子供たちが大好きな食べ物といえば、イチ押しは今も昔もカレーだろう。もちろん大人だってそう。老若男女を問わず人気のカレーが国民食といわれて久しい。

カレーは今も昔の食卓の人気者…

今のように家庭で手軽にカレーが作れるようになったのは板チョコ状のカレールウが本格的に登場した1960年代から。カレールウをめぐってはハウス食品、エスビー食品、江崎グリコが御三家だが、なかでもシェア6割と断トツの存在がハウス食品だ。ハウス食品グループ本社<2810>の中核を担う。1963年発売の「バーモントカレー」は爆発的にヒットし、いまだにトップクラス売り上げを誇る看板商品。ハウス食品はカレーのルウはもとより、レトルトでも充実した品ぞろえで他社を大きくリードする。ただ、カレーのルウとレトルトを合わせた売り上げは約520億円(2017年3月期実績、売上高比率約18%)で、この10年間をみると、横ばい圏で推移している。

■カレーチェーンの「CoCo壱番屋」を買収

こうした中、事業拡大に力を入れているのが外食だ。2015年に、「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋(愛知県一宮市)を買収し、連結子会社化した。CoCo壱番屋の店舗数は2018年3月末現在で1453店。国内1299店舗のほか、中国、台湾、韓国、タイ、米国など海外で154店舗を持ち、同社外食事業のかなめとなっている。

ハウス食品は1913年、大阪で薬種化学原料店「浦上商店」として創業した後、食品分野に進出。1960年にハウス食品工業(1993年からハウス食品)に社名変更するまでの10年ほどは「ハウスカレー浦上商店」と名乗っていた。

ハウス食品グループはM&Aによる事業拡大にも意欲的だ。2007年に、武田薬品工業から事業取得したのが飲料・健康食品ブランド「C1000」(ビタミンレモン、レモンウォーターなど)。2016年には「GABAN」のブランドでおなじみの香辛料メーカー、ギャバン(当時ジャスダック上場。東京都中央区)を子会社化した。続いて2017年8月、鍋物の供としてデンプン麺「マロニー」で高い知名度を持つマロニー(大阪府吹田市)の子会社化に踏み切った。

「こどもの日」はゴールデンウイークも最終盤で連休疲れがたまっているころ。食卓を、手軽でおいしいカレーで決めてみませんか…!

【子供服】M&Aに2年間で7億6900万円を投入 キムラタン

子供服やベビー服を手がけるキムラタン<8107>は2018年1月から2019年12月までの2年間で、M&Aに7億6900万円を投じる。今後、具体的な案件が出てくる見込みで、この2年間が同社事業の内容や規模が変わる転換期になりそうだ。

キムラタンは2017年10月に新株予約権を発行して14億6900万円を調達することを公表した。調達資金はM&A向けの7億6900万円ほのかに「物流パートナーが運営する中国物流倉庫建設への出資」に2億円、「企業主導型保育園への事業進出」に2億円、「本業の仕入資金」に3億円を投じる。

保育園の制服(同社ホームページより)

M&Aの対象については本業のベビー服や子供服関連の分野に絞り込む作戦だ。現在、ギフトや雑貨が好調なことから、こうした分野である服飾雑貨メーカーなどが有力のよう。ベビー服や子供服の市場は厳しい環境にあるが、本業との相乗効果を狙って「打って出る」ことにした。

■保育園事業にも参入

このほか2億円を投じる保育園については、すでに2018年4月に、神戸・元町にオープンした。今後3年間で10園程度の新規オープンを予定しており、子育て支援企業としての魅力を訴えるという。

保育園ではアパレルメーカーらしく、ナチュラルな色合いで見た目にも優しい、半袖、長袖のTシャツ、トレーナー、長丈パンツ、ハーフパンツ、帽子などからなる制服を支給し、汚れ物はすべて幼稚園で洗濯、着替えやおむつを持参する必要がないという。

キムラタンが本社を置く神戸は港町で、1868年に神戸港が開港。その後衣食住をはじめとする多様な外国文化が入り、当時の日本に大きな影響を与えた。その一つが洋服で、日本人初のテーラーが神戸・元町に開業し、神戸は近代洋服業発祥の地となった。

現在でも大手アパレルメーカーのワールドや、子供服のファミリアなどが神戸に本社を置いており、キムラタンもこうした企業の1社。

創業は1948年で、ベビー服や子供服を中心にスーパーや百貨店での販売、ネット通販などに取り組んできた。2018年3月期は売上高は44億2000万円と前期よりも5.3%増収となるものの、営業損益は3億2000万円の赤字の見込みだ。「売って出る」M&Aが起死回生の一打となるか。

【教育】1000億円のM&A資金で業界再編の目玉になるか ベネッセHD

教育事業最大手のベネッセホールディングス(HD)<9783>は2018年度から2022年度までの5年間で約1000億円を投じ、積極的なM&Aに取り組む。まず2018~2020年度は教育、介護など既存事業の競争力の強化を目指し、教育事業者や塾のほか語学事業も対象になる。続く2021~2022年度は生活・人材・健康関連で、教育・介護に続く「第3の柱」となる事業のM&Aに着手する。

ベネッセは国内事業で主力の通信教育「進研ゼミ」の会員数が回復するなど、教育事業は相変わらず好調だ。しかし、今後は少子化による市場の縮小が進むのは確実で、子供の獲得競争が過熱するのは間違いない。教育事業は人件費や広告宣伝費などの固定費がかかり、損益分岐点が高い。そのため高稼働率を維持することが利益獲得のために必須であり、合併や買収による事業の効率化や規模拡大が経営課題となっている。

すでにベネッセは「通信教育依存」の経営体質を改めるため、リアルな学習塾事業に乗り出している。紙のテキストとデジタル教材を組み合わせる「進研ゼミ+」の教材を使った個別指導塾のフランチャイズチェーン(FC)展開のほか、東京個別指導学院やお茶の水ゼミナール、関西地区を地盤とするアップ、さらには難関校受験に強い鉄緑会を運営する東京教育研などを傘下に収めてきた。

ベネッセの学習用タブレット
学習用タブレットなどを駆使し、多様な教育ニーズに応えている(Photo By MIKI Yoshihito)

■大手塾の買収も

国内学習塾数は、少子化にもかかわらず1990年代初めからほぼ横ばいで推移しているが、そのほとんどが個人経営の学習塾だ。ベネッセは個別指導塾のFC展開で零細学習塾を取り込みグループ化する「水平戦略」に加えて、進学実績が高い有名学習塾を買収して授業料が高い教育ビジネスを増やす「垂直戦略」の両輪で教育事業を安定させることになりそうだ。さらには業界ナンバーワンの資金力で、早稲田アカデミーやリソー教育、Z会といった大手塾の買収も考えられる。

少子化に加えて平均所得の伸び悩みによる家計教育費の減少、進学率の頭打ちなどで、教育市場の縮小は2018年以降、急速に進むともいわれている。業界最大手のベネッセが1000億円規模のM&Aを打ち出したことで、業界再編が加速しそうだ。

文:M&A Online編集部