親子会社間の情報伝達ツール「連結パッケージ」のつくりかた しっかり学ぶM&A基礎講座(70)

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M&Aによりグループ会社が増加すると、適切な連結財務諸表を効率的に作成することが課題となります。その際、グループ会社の情報をスムーズに収集するために欠かせない仕組みが「連結パッケージ」の利用です。連結パッケージとはどのようなものなのか、また、連結パッケージにはどのような項目を含めればよいのかについて解説したいと思います。

会社によって異なる勘定科目名や勘定体系

連結財務諸表は、それぞれのグループ会社の単体財務諸表を合算し、必要な調整を加えることにより作成されます。例えば、Excelで貸借対照表や損益計算書を合算することを想像していただきたいのですが、各社で使用している勘定科目の名称や並び方、行数が同じでない場合、そのまま合算することはできません。

ある会社では「工具」と「器具・備品」を区分して計上しているのに対して、別の会社では「工具、器具及び備品」という1つの科目で計上していることが考えられます。また、ある会社では仕入にかかる値引を「仕入値引」という独立した科目で計上しているのに対して、別の会社では「仕入高」のマイナスとして処理しているかもしれません。

連結パッケージは精度の高い連結財務諸表を作るための必需品

このように各社の処理にちょっとした違いがあるだけでも、連結財務諸表作成の第一ステップである単純合算が一筋縄ではいかないことに気付きます。こうした単純合算に加え、グループ会社間の相殺消去、注記や附属明細を含む各種の開示項目においても、決算書データ以外の追加の情報が必要となります。

必要となる情報を各社に逐一問い合わせすることもできますが、あらかじめグループ共通の書式で提出してもらえば、親会社における連結決算作業が効率化できます。このような共通書式による情報収集ツールがまさに連結パッケージと呼ばれるものです。

連結パッケージの準備・配布・回収を決算スケジュールに織り込む

連結パッケージは、連結財務諸表を作成するためのソフトウェアに装備されていることもありますが、Excelなどで書式を作って各社に配布し、期限までに提出してもらう方法が一般的です。

連結パッケージには、統一の勘定科目への「組替表」や科目ごとの内容を明らかにしてもらうための「勘定明細」を含めることがあります。また、海外子会社がある場合には、外国語と日本語の「勘定科目対応表」を含めることも考えられます。

【連結パッケージの準備】

上図に見られる「関係会社取引明細書」はグループ会社間の取引や債権債務を適切に相殺消去するためには必須の情報です。同様に「未実現損益除去計算書」はグループ間で売買された棚卸資産や固定資産に含まれる利益相当分を控除するための基礎資料になります。

なお、連結財務諸表ではグループ間の取引や債権債務は消去して、グループ外部に対する取引や債権債務だけを計上するのが基本です。同様の発想から、グループ間で売買された際に計上された利益が棚卸資産や固定資産に含まれている場合はそれらを控除することになります。そのため、連結パッケージにより関連情報を収集することが役立つわけです。

【連結パッケージの回収】

CF計算書の作成、その他の開示に必要な情報も収集

連結キャッシュフロー計算書の作成方法として、理論上、各社単体のキャッシュフロー計算書を作成して、それらを合算する方法も考えられます。しかし、実務上は連結貸借対照表の増減(対前期)や連結損益計算書など連結ベースの数値から作成していきます。

そのため、連結パッケージには、各社の単体キャッシュフロー計算書ではなく、資金の範囲に関する情報、固定資産に関連する未払金や減価償却費の情報など連結キャッシュフロー計算書作成に必要となる基礎情報を含めます。

連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュフロー計算書などの本表作成以外に、注記や附属明細を含む各種の開示項目の作成が必要となります。そのため「有価証券時価情報」「リース関係データ」「セグメント関連データ」「担保注記関連データ」などの情報も連結パッケージに含めることになります。

連結パッケージに含めるべき項目は各社各様といえます。決算時期以外での情報共有の度合いや各社が使用する会計ソフトなどによっても必要となる追加情報は異なります。連結作業におけるやり取りを重ねるにつれて、連結パッケージの内容も洗練されていくものと考えるとよいでしょう。

文:北川ワタル