【M&A仕訳】全体像(連結会計編)

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M&Aが行われた際の会計処理は、M&Aがどのような形態でなされたかによって異なります。M&Aの形態には株式取得、事業譲渡、株式交換など様々なものがありますが、それぞれについて個別決算上、連結決算上、税務上の処理を区別しながら考える必要があります。

個別、連結、税務を「縦軸」、株式取得、事業譲渡、株式交換などのM&A形態を「横軸」にして、すでに「【M&A会計】M&A仕訳の全体像についてわかりやすく教えます」以降全8回にわたり個別会計におけるM&A仕訳の解説を連載しています。

本稿は「連結会計編」の第1回目に当たります。以降全8回にわたって連結会計におけるM&A仕訳を解説していきたいと思います。第1回目となる今回は連結会計編の全体像を俯瞰してみることにしましょう。

解説するM&A形態はぜんぶで7種

個別会計編と同様に「横軸」となるM&A形態は下記の7種です。 ここではそれぞれの形態について簡単に説明しておきます。

① 株式取得

株式取得は、文字どおり、対象会社の株式を購入などにより取得するものであり、もっともシンプルなM&A形態といえます。単に「買収」といえば、基本的には現金を対価とした株式取得を指します。

② 事業譲渡

事業譲渡は、教科書的には「一定の営業目的のために組織された有機的一体として機能する財産を譲渡すること」と説明されます。つまり、個別の資産や負債でなく、事業をまとめて譲渡する行為を指します。事業譲渡を受けた側にとってはM&A手法ということができます。

③ 株式交換

株式交換は、完全親子会社関係を作るための組織再編手法です。完全子会社となる会社の株式すべてを取得するかわりに、完全親会社となる会社は自社の株式を完全子会社となる会社の株主に交付するものです。

④ 株式移転

株式移転も、完全親子会社関係を作るための組織再編手法です。具体的な手続も株式交換と似ていますが、完全親会社となる会社が新設される点で株式交換と異なります。

⑤ 合併

合併は、2つ以上の法人などが1つに統合する手続であり、M&Aの「Merger」の典型といえるものです。なお、通常、合併の対価は株式でしたが、過去の会社法改正により合併対価の柔軟化が図られ、株式以外にも金銭その他のものが対価となり得ます。

⑥ 会社分割

会社分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることを指します。会社分割には、事業を既存の会社に承継させる吸収分割と事業を新設会社に承継させる新設分割があります。事業に関する権利義務を承継する会社にとってはM&Aの手法と捉えられます。

⑦ 第三者割当増資

第三者割当増資は、持株比率の変動を伴う増資です。既存株主に対して株式を割り当てる場合でも、従前の持株比率とは異なる場合には第三者割当増資にあたります。

各M&A形態はどのような切り口で分類できるか

以上のようなM&A形態は一定の切り口で分類することができます。例えば、①株式取得や②事業譲渡は取引法上の行為であるのに対して、③株式交換、④株式移転、⑤合併、⑥会社分割は組織法上の行為であるという分類が可能です。なお、⑦第三者割当増資は資本取引あるいは資金調達取引と考えられます。

連結決算の基本は、親会社と子会社の決算書を合算した後に両者間の取引や債権債務を相殺消去することです。

こうした連結仕訳を考える際には、各M&A形態がどのような取引や行為に属するのか、また誰と誰の間で行われているのかを検討することが役立ちます。これらの着眼点を踏まえながら、次回以降、各M&A形態における連結上の処理を具体的に確認していきましょう。

文:北川ワタル

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