紀文・東芝・ブルドックソース…3社に今年共通すること

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創業から83年、東証1部に「新規」上場した紀文食品

紀文食品、東芝、ブルドックソース…。紀文食品とブルドックは食品メーカー、東芝は電機メーカーという違いはあるが、いずれも抜群の知名度を持つ。もう一つ共通項を探せば、3社はそろって今年、東証1部の上場銘柄になったこと。ただ、その経緯は「新規」「返り咲き」「昇格」と三者三様だ。

紀文、創業83年で「東証1部」に初上場

紀文食品は4月13日に東証1部に新規上場したばかりのほやほや。同社はちくわ、はんぺんなどの水産練り製品の最大手で、売上高は1000億円を超える。業界2位の一正蒲鉾(2014年に東証1部)を3倍近く引き離す。規模や業績、財務内容も良好で、いつ上場してもおかしくない企業の一つとされてきたが、創業83年目にして株式上場に踏み切った。

その最大の理由は海外展開。人口減や食の多様化などで水産練り製品の国内市場が縮小に向かう中、成長戦略として海外に活路を見いだすことが必須の課題となっている。海外売上高は現在10%程度。

すでに海外で人気の高いカニ風味かまぼこなどに加え、米国市場では2018年から糖質ゼロの麺(おからパウダー、こんにゃく粉が原料)を投入し、売り上げを伸ばしている。上場で信用力や資金調達力を増し、海外市場開拓にアクセルを踏み込む構えだ。

上場1週間後の4月20日の紀文食品株の終値は2040円。公開価格1160円の約6割高と上々の滑り出しを見せている。

東芝、3年半ぶりの1部復帰も買収の標的に

1月末に東証1部に3年半ぶりに復帰したのは東芝だ。不正会計問題や買収した米原子力企業をめぐる巨額損失で債務超過が確実となり、2017年8月に東証2部に降格した。

東証1部に「返り咲いた」東芝

東芝は2015年に発覚した不正会計問題を受け、歴代3社長が引責辞任する事態に発展。経営の屋台骨が揺らぐ中、半導体や医療機器、白物家電など基幹事業を相次いで手放し、苦境をしのいできた。

念願の東証1部に返り咲き、「東芝復活」にいよいよ踏み出そうとするタイミングで4月に入って表面化したのが英国投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案。株式の非公開化を前提にしたものとされ、車谷暢昭前社長の辞任を受けた東芝新経営陣にはまたしても難題が降りかかる形に。

ただ、4月20日、CVC側が一転して買収提案の検討を中断するとの書面を東芝に送ったことが明らかになり、買収撤回の可能性が高まっている。

ブルドック、半世紀近い「2部」時代に別れ

一方、ブルドックソースは1月半ば、東証1部に昇格した。1973年以来50年近く及んだ東証2部に別れを告げた。2022年の創業120年を見据え、経営体制を強化する狙いがある。

「昇格」組のブルドックソース

同社は1902(明治35)年に、食料品卸商三澤屋商店として開業し、その3年後にソースの製造を始めた。マークの表記は「Bull-Dog」だが、注意を要するのは社名の場合、「グ」ではなく「ク」。間違いやすい社名の一つだ。

100年を超える歴史に激震が走ったのは2007年。日本のM&A史に残る「ブルドックソース事件」が起きたのだ。米投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックに対して敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。ブルドックは対抗策として日本初の買収防衛策を発動した。法定闘争の末、ブルドックが勝利した一件だ。

東京証券取引所は現在4つある市場(1部、2部、ジャスダック、マザーズ)を3つに集約する市場再編を2024年4月に予定する。東証上場の約3770社のうち、約2190社を数える1部市場の名称は「プライム」に改められる。とりわけ、最上位の1部上場を巡っては今後、ブルドックソースの場合のような指定替えを含めて“駆け込み上場”が増えることが予想される。

文:M&A Online編集部