M&Aの「意向表明書」サンプル書式と注意点

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※画像はイメージです

M&A意向表明書の書式と書き方について

M&Aを進める当初、会社の買い受けを希望する企業は、売り手企業に対し「意向表明書」を提出する必要があります。

売り手企業は提出された意向表明書の内容を確認し、関心を持てば話を進めますし関心を持てなかったら断ります。意向表明書はM&Aのスタート地点に立つための非常に重要な書類と言えます。

以下では意向表明書の書式と書き方をご説明していきます。

1.意向表明書の書式

 

意 向 表 明 書

〇〇株式会社 
代表者 代表取締役 〇〇〇〇 殿

所在地 東京都新宿区〇〇〇 1番1号 
株式会社サンプル           
代表者 代表取締役 山田 太郎   印

 

このたびは、貴社株式譲渡案件(以下「本件」と言います)につきまして当社に検討の機会を下さいまして、誠にありがとうございます。

当社は本件に大変な関心を抱いておりますところ、以下の通り、本件に対する意向を表明させていただきます。


1.当社の概要

会社名    株式会社サンプル           

本店所在地  東京都新宿区〇〇〇1番1号            

代表者名   代表取締役 山田 太郎               

事業概要   XXXXXXXX                      


2.希望する株式譲渡の価額、取引形態

取引形態
100%発行済株式の譲り受け(株式譲渡)

希望価額   〇〇億円~〇〇億円

ただし追加提出された書類やデューデリジェンスの結果によって変更される可能性があります。

 

3.株式譲渡価額の算出方法

事前に受け取った貴社資料内容にもとづき、純資産法に収益還元法を加味して計算しています。

 

4.本件M&A取引への参加を希望する理由、目的

 XXXXXXXX                      


5.本件取引後の貴社代表者〇〇〇〇殿及びその他役員、従業員の処遇について

従業員につきましては基本的に本件取引後も全員の雇用を現状と同じ条件にて維持します。
代表者及び取締役につきましても任期まで現状通りの条件にて委任契約を継続する意向です。

 

6.本件を行うに際して必要な資金調達方法

手元の現預金及び一部借入金によって調達予定です。

 

7.本件取引完了までのスケジュール

基本合意締結・・・・・・2019年〇月〇日
デューデリジェンス・・・2019年〇月〇日
最終合意締結・・・・・・2019年〇月〇日
クロージング・・・・・・2019年〇月〇日

 

8.デューデリジェンスについて

弊社の指定する専門家の手により、財務、法務、税務、ビジネスについてのデューデリジェンスを実施、費用は弊社にて負担します。具体的な調査方法や実施日などはご相談させていただきたく存じます。

 

9.独占交渉権

2019年〇月〇日まで弊社へ独占交渉権を認めていただき、その間は他社と本件に関する協議をなさらないよう、お願いいたします。

 

10.本意向表明書の有効期間

本意向表明書の有効期間は、以下のうち最も早く到来した日とします。

・取引基本契約締結日
・本件取引の最終合意契約締結日
・本件取引の検討中止を表明した日
・2019年〇月〇日

 

11.秘密保持

本意向表明の存在及び内容については一切第三者へ漏えいしないようお願いいたします。

 

12.法的拘束力

本意向表明書はデューデリジェンス実施前の暫定的な意向を示すものであり法的拘束力を持ちません。デューデリジェンスを含む今後の調査結果や提出資料内容によっては上記で示した条件の変更を求めたり検討を中止したりする可能性があります。

 

13.その他の条件、ご希望事項など

XXXXXXXX                                                

 

次のページでは、意向表明書作成のポイントを解説します。

2.意向表明書の書き方

意向表明書を作成するときには、以下のように書き進めましょう。

2-1.会社概要

まずは申込み企業の会社概要を記載します。社名と本店所在地、代表者名と事業概要を書けば充分です。

2-2.取引形態、希望する価額

希望する取引形態と譲渡価額を書きます。本件では株式譲渡を前提としているので株式の価額を書いていますが,事業譲渡のケースであれば事業の買い受け価額を書きます。ある程度幅を持たせて書いてもかまいません。

2-3.計算の根拠

なぜその金額としたのか、計算の根拠を書きましょう。

2-4.M&Aに参加する理由、目的

たとえば事業拡大、エリア拡大、新事業への参入、相乗効果などM&Aの目的を具体的に書きましょう。

2-5.従業員や役員の待遇

M&A後、従業員や役員がどのような待遇となるかは売り手企業にとっても多大な関心事項です。意向表明書内に自社の考えを記載しましょう。

2-6.資金調達方法

どのようにしてM&Aの資金を用意するのかも明らかにします。手持ち資金や資産売却、借入など具体的に書きましょう。

2-7.スケジュール

M&Aを進めるに際し、予定しているスケジュールを書きます。重要なポイントは基本契約書の締結時、デューデリジェンスの完結日、最終契約書締結日、クロージングの日です。ただしこの段階では暫定的な予定となるので、だいたいの目算でかまいません。

2-8.デューデリジェンスの実施

M&Aではデューデリジェンスが必須です。法務、財務、税務など具体的に何のデューデリジェンスを実施したいのか書きましょう。誰が調査を行うのか、費用は誰が負担するのかも記入します。

2-9.独占交渉権

意向表明書が提出されると、独占交渉権が与えられるのが通常です。いつまで独占交渉権を付与してもらいたいのか明らかにしましょう。

2-10.法的拘束力

意向表明書には法的拘束力を認めないのが通常です。そこで法的拘束力を認めないことを明らかにしておきます。

2-11.有効期限

意向表明の内容がいつまでも有効とするわけにはいかないので、有効期限を定めます。日にちによって期限を区切りつつも、その日の前に基本契約や最終譲渡契約を締結したりM&A取引の検討を中止したりしたときには効力を失うと定めましょう。

2-12.秘密保持

意向表明の内容は営業に関する重大な機密事項なので、秘密保持についても記載して起きましょう。

2-13.その他の要望事項

売り手企業にその他の要望があれば、書き込めるようにしておきます。


・・・・・

以上が、M&Aの意向表明書に記載すべき内容と書き方です。

意向表明書はM&Aの端緒となり、また買い手企業が売り手企業に自己紹介を行う役割も果たす重要な書類です。上記のサンプルを元に、効果的な書面を作りM&Aを成功させてください。

※ 上記はあくまでサンプルです。事案により内容は変わります。

文:福谷陽子(法律ライター)