【亀田製菓】あられ、せんべいからの脱皮目指す 

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2月18日から4月中旬までの期間限定で販売する「35g 亀田の柿の種 激シビ辛ラー油味」「182g 亀田の柿の種 シビ辛ラー油味 6袋詰」に比べ辛味成分を10倍配合した

亀田製菓<2220>が「あられ、せんべい」からの脱皮を始めた。2019年2月に実施した6年ぶりのM&Aはその第一弾。2019年3月期から2024年3月期までの6年間でM&Aに400億円を投じるという。

目指す姿はグローバル・フード・カンパニー。あられ、せんべいなどの米菓を主力としつつも、国内では非常食事業の拡大、乳酸菌やアレルギー対応食品の開発、米国では健康菓子事業の買収、欧州では新規参入のためのM&Aなどを実施する。

こうした取り組みで2024年3月期に売上高1300億円(2018年3月期比30.6%増)、営業利益130億円(同2.6倍)を達成する計画だ。

亀田製菓がまとめた資料によると、2017年の米菓メーカーのシェアは亀田製菓が28.6%のトップで、2位に10ポイント近く水をあけた。

あられ、せんべいからの脱皮を目指す亀田製菓は2024年3月期に米菓トップの座を明け渡すのだろうか。

目指すはグローバル・フード・カンパニー

亀田製菓が2019年2月に実施したM&Aの対象企業は、玄米パンやベジタリアンミートなどのグルテンフリー食品を製造するマイセン(福井県鯖江市)。同社株式の 90%を取得し、子会社化した。

亀田製菓はマイセンを取り込むことで、販路や品質、製造ノウハウの共有などを進めるとともに、両社の強みを生かした新商品開発などに取り組む。国内の食品事業の一つの柱となる事業だ。

国内の食品事業のもう一つの柱となるのが子会社の尾西食品(東京都港区)の事業。同社は米を原料とする長期保存食品を手がけており、長期保存を実現するアルファ米製造で高い技術を持つ。この技術を核に非常食事業を拡大するとともに、新たな商品の開発を進める。

こうした取り組みによってグローバル・フード・カンパニーのフード・カンパニーは実現できる。ではグローバルはどうか。

海外売上比率が2倍に

亀田製菓は1989年に米国のセスマークフーズ社(現TH FOODS)に出資し、米国での米菓生産に乗り出した。その後の健康志向や日本食ブームが追い風となり、米国事業は順調に推移。2008年にはKAMEDA USAを設立し、亀田の柿の種の販売を始めた。

2012年には米国のオーガニック・ライスクラッカーの大手Mary’s Gone Crackersを子会社化した。同社はオーガニック(有機栽培)、グルテンフリー、ヴィーガン(純菜食主義)、ホールグレイン(全粒粉・全粒穀物)をコンセプトにした商品を生産しており、2018年7月に旧工場を閉鎖し、新工場による効率の高い生産に切り替えた。

これら既存企業の増強とともに、健康菓子事業の買収などを加え、米国では2024年3月期に2018年3月期比2.9倍の165億2500万円の売り上げを見込む。

アジアでは2003年に青島亀田食品有限公司を中国に設立、日本向け米菓の生産を始めた。2009年にはタイのSMTC(現THAI KAMEDA)を子会社化、アジア市場をはじめ日本や欧米への供給拠点として整備した。

2013年にはベトナムの米菓トップ企業との合弁会社であるTHIEN HA KAMEDAを設立、ベトナム米菓市場向けに亀田製菓の商品のほか現地化した商品の生産を行っている。

2017年にはインドで現地企業との合弁会社であるDaawat KAMEDAを設立、インド国内のスナック市場向けに米菓の生産を始めた。2018年はカンボジアで合弁会社LYLY KAMEDA CO., LTD.を設立した。こららアジア地域の企業の売上高は、2024年3月期に2018年3月期比1.4倍の23億7500万円を見込む。

欧州については現在拠点がないため、新規参入のためのM&Aを検討していく。このため売上目標は設定していない。

海外売上比率は2018年3月期が7.5%なのに対し、2024年3月期は一気に14.5%にまで上昇する見込みで、欧州でのM&Aが実現すれば、この比率は一層高まることになる。

「女性や子供に喜びと潤いを届けたい」が創業の理念

「男性はどぶろくで気晴らしができるが、女性や子供には楽しみといえるものがない。なにか生活に喜びと潤いを届けたい」

戦後間もない食糧難の時代に、このような想いから水飴づくりに挑戦した亀田郷農民組合委託加工所の創業が亀田製菓の始まり。1946年のことだ。その4年後の1950年に焼き菓子や柿の種などのもち米菓の生産を始め、1957年に亀田製菓が発足した。

定番商品である「ピーナッツ入り柿の種」(1966年発売)や、「サラダうす焼」(1967年発売)、「ハッピーターン」(1976年発売)などを次々に投入し、1984年に米菓業界で初めて株式上場を果たした。

1999年度の決算で創業以来初めての営業赤字に転落したものの総じて業績は堅調で、1975年には米菓業界で売上高1位(163億7000万円)となり、1986年には売上高が500億円を突破した。2019年3月期は売上高が1000億円の大台に乗る見込みだ。

亀田製菓の売上高推移。2019年3月期は予想
亀田製菓の営業利益推移。2019年3月期は予想

M&Aの出番は多そう

亀田製菓では2024年3月期を最終年度とする中期経営計画の次ぎの目標も設定している。2031年3月期に国内での米菓売り上げを全体の半分以下に抑え、他の商品を比率を高めるというものだ。 

その時点での営業利益は2024年3月期のほば2倍の250億円。時価総額は3000億円を目指すという。ここまで実現して初めて「グローバル・フード・カンパニー」と位置付ける。

12年後の姿はどのようになっているのか。現在主力の米菓事業の比率を半分以下に抑えるとなると、他の食品事業の急速な拡大が不可欠。M&Aの出番は多そうだ。

亀田製菓の沿革と主なM&A
1946 現亀田工場で亀田郷農民組合委託加工所を創業し、水飴の委託加工を開始
1950 水飴の生産を中止し、焼菓子や柿の種などのもち米菓を生産
1957 亀田製菓を設立
1965 売上高10億円を突破
1966 「ピーナッツ入り柿の種」を発売
1967 「サラダうす焼」を発売
1975 米菓業界で売上1位に (163億7000万円)
1976 「ハッピーターン」を発売
1984 米菓業界としてはじめて新潟証券取引所に株式を上場
1986 売上高500億円台を達成
1989 米国のセスマークフーズ社(現・TH FOODS,INC.)に出資
1992 新潟輸送、アジカルを子会社化
1997 情報システム事業部を分社化、ケイ・システムを設立
2000 新潟証券取引所と東京証券取引所の合併に伴い、東証市場第二部に上場
2003 中国に青島亀田食品有限公司を設立
2004 とよすを子会社化
2004 日新製菓を子会社化
2008 米国にKAMEDA USA,INC.を設立
2009 タイのSMTC Co.,Ltd.(現・THAI KAMEDA CO., LTD.)を子会社化
2012 東京証券取引所市場第一部銘柄に指定
2012 米国のMary's Gone Crackers. Incを子会社化
2013 尾西食品を子会社化
2013 ベトナムで合弁会社THIEN HA KAMEDA, JSC.を設立
2017 インドで合弁会社Daawat KAMEDA (India) Private Limitedを設立
2018 カンボジアで合弁会社LYLY KAMEDA CO., LTD.を設立
2019 マイセンを子会社化


文:M&A Online編集部