最高裁 企業再編課税でIBM勝訴を確定 還付加算金含め千数百億円を返還へ

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企業再編税制を活用した税務スキームが「租税回避か否か」で争われていた日本IBMの持ち株会社と国税当局との争いが2月19日、国税当局側の敗訴で決着した。国税当局は今後、還付加算金を上乗せして千数百億円を日本IBMに返還する。同様のYahoo裁判については、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)が判決期日を2月29日に指定している。

 租税回避目的で自社株を売買したとして、東京国税局から約4千億円の申告漏れを指摘された日本IBMの持ち株会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(東京)が、約1197億円の課税処分の取り消しを国に求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、2月18日付で1審、2審判決を支持し、国税当局の上告を退けた。この決定を受けて、国はIBM側に利子にあたる還付加算金を上乗せした千数百億円を返還する。

 この争いは、日本IBMの持ち株会社が2002~05年、米国IBM側から取得した日本IBM株の一部を日本IBMに低額で売却。約4千億円の売却損を計上し、「連結納税制度」で日本IBMの黒字分と相殺して申告した。これに対して東京国税局は、「持ち株会社に実体はなく、一連の行為には法人税を免れる意図があった」と認定、11年度までの10年間について追徴課税した。IBM側は「法的に問題ない」と反論していた。

 1審の東京地裁は、持ち株会社は日本IBMグループの再編で買収企業の受け皿になるなど、実体があったと認定し「課税逃れの意図があったとは認めがたく、課税処分は違法だ」などと判断。2審の東京高裁も地裁判決を支持し、控訴を退けていた。

 巨額の課税処分が取り消されたケースでは、不良債権処理を巡り法人税約1480億円を追徴課税された旧日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)と、贈与税など約1330億円を追徴課税された武富士元会長(故人)の長男に次ぐ規模となる。

租税調査研究会事務局 2016年2月22日のKaikeiZine記事より転載

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