確定申告で間違いやすい医療費控除 インフルエンザの予防接種は対象外

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Photo by KaikeiZine

年末にインフルエンザやノロウイルスなどで寝込んだ方も少なくないようだが、掛かった医療費はしっかり取り戻したいもの。2月16日から確定申告が始まるが、領収書の整理は意外に時間がかかるので、そろそろ医療費控除のための準備をしておいた方がよい。

気を付けたい医療費控除のキホン

暖冬のおかげで、例年と比較し、インフルエンザがまだ大流行というわけではないが、年末の忙しいなか、胃腸炎(嘔吐下痢症)に感染した人が多いという。とくに、小さなお子さんをお持ちの家庭では、子どもからの感染で、一家全員が病気になるなども珍しくない。年間を通じて、医療費だけでもバカにならないが、掛かった医療費は取り戻したい。
今年も2月16日から3月15日まで確定申告が始まる。意外に時間がかかるのが医療費控除のための領収書の整理。対象者は、そろそろ還付のための準備を始めておいた方がよい。

まず、医療費控除は、病気やケガ、出産などで1年間(1月1日~12月31日)の医療費が家族総額で10万円を超えた人、または、「総所得の5%(総所得金額200万円未満の人)を超える」場合、「最高200万円」まで税金の還付、軽減が受けられる制度のこと。医療費控除は年末調整で控除できないため、確定申告することで税金が戻ってくる可能性がある。
主婦の中には、とりあえず「病気」に関する領収書ならすべて残しておき、医療費控除に混ぜて申告する人もいるようだが、医療費控除の対象になるものか、そうでないか、線引きがあるので注意したい。

難しい線引き 医療費控除の対象になりそうでならないもの

最も勘違いが多いのが、インフルエンザの予防接種。家族全員で予防接種を受けた場合、たとえば4人家族なら、2万~4万円程度かかる。意外に知られ ていないが、インフルエンザの予防接種は、医師が料金を決められるので、病院によって予防接種代は開きがある。一般的には2500円から5千円が相場だ。 昨年からは、ワクチンの効果を上げるため、原価が掛かったことから製薬会社からの卸値が5割増しになった。そのため、多くの医療機関は、およそ500円程 度値上している。
ならば、なんとしても医療費控除にしたいところだが、基本的にインフルエンザの予防接種は、医療費控除の対象にはならない。理由は、医療費控除の対象が〝治療″であり、予防は対象外だからだ。
ちなみに、インフルエンザにかかってしまい、医者で治療すれば、それは〝治療″なので、それに要した費用は医療費控除の対象になる。

この治療と予防で線引きが難しいのが、この時期皆しているマスク。マスクは、この時期から花粉症シーズンが過ぎるまでの消費量は増えるので、医療費控除で落としたい品物だ。
ただ、こちらも治療でなければ医療費控除の対象にはならない。
最近は、手軽に高性能加湿空気清浄機が手に入るようになったが、病気予防で購入する場合は、医療費控除の対象にならないので気を付けたい。医者が、治療のために必要というのならば医療費控除の対象になる可能性がある。

このほか、医療費控除の対象になりそうでならないのが、医師への謝礼だ。有名な医師に手術や治療をお願いした場合、謝礼を渡すケースがあるが、これは、直接的な治療費ではないのでNGだ。
メガネ、コンタクトレンズ代をはじめ、健康診断の費用も治療ではないので同様に医療費控除の対象にはならない。

医療費控除の対象となるものとは

一方で、風邪治療のため、ドラッグストアなどで薬を購入したのなら、その費用は医療費控除の対象になる。
意外に知られていないのが、通院時の交通費。日付と交通手段、金額の明細書を作れば、医療費控除として認められる。(病院の診療明細の日付と合っていること)。緊急時のタクシー代も医療費控除の対象だ。たとえば、急病の子どもに付き添う親の交通費。医師を自宅に送迎するための交通費など。
このほか、以下に掲げるものが医療費控除の対象になる。

<医療費控除になるもの>
(1)医師・歯科医師による診療、治療費
(2)治療、療養に必要な薬
(3)治療のため薬局で購入した薬
(4)急病やケガなどで病院に運ばれた際のタクシー代など
(5)通院入院の際の交通費
(6)付添人の交通費
(7)入院の部屋代など
(8)医療用器具の購入費。たとえば、コルセット・義手・義足・松葉杖・補聴器・義歯など
(9)治療に係わるおむつ代。6カ月以上寝たきりでおむつの使用が必要な場合、その購入またはリース代。
(10)助産婦などによる出産介助に対する料金
(11)あんま・マッサージ、指圧師、鍼師、灸師、柔道整復師による施術費
(12)介護保険などによる居宅サービス(*在宅療養については領収書に医師等の証明があったもの)

基本的に、税務署は土日休みなので、平日に確定申告をする必要がある。ただこの時期、一部税務署は、日曜日に行っているので確認しておきたい。今年の日曜開庁は、2月21日と28日だ。
(詳しくは http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/heichoubi.htm

改正される特別医療費控除の中身とは

ところで、平成28年度税制改正では、ドラッグストアなどで市販されている薬を年間1万2千円以上購入すると、「特別医療費控除」が受けられる予定だが、この中には、通常の医療費控除の対象にならない予防も控除対象になっているので覚えておきたい。
この特別医療費控除は、これまでの医療費控除の特別枠として設けられるもので、対象は市販薬に限られる。
新制度の正式名称は、「セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除」。
適用は、平成29年1月1日から平成33年12月31日まで。この間に、自己もしくは自己と生計を一にする配偶者及びその他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品を購入した対価について、年間1万2千円を越える部分について総所得金額等から控除される。上限は8万8千円だ。
控除を受けるには、適切な健康管理のもと医療用薬品からの代替を進めるものなので、日ごろからの健康管理、予防促進などに取り組む必要がある。
たとえば、税制大綱に明記されたものを見ると、
①特定健康診断、
②予防接種、
③定期健康診断、
④健康診断、
⑤がん検診
などを受けておく必要がある。新制度は、医療費控除と特別医療費控除の選択制で、納税者が有利な方を選ぶことができる。

KaikeiZine(2016.01.12)より転載