大学入試本番だが、学習塾・予備校の業界再編のゴングも鳴る?…

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試験を待つばかりのキャンパス(東京・四谷の上智大学)

 2月にカレンダーが切り替わり、2018年大学入試がラッシュを迎える。4日の日曜日まで連日、200校以上で入試が行われる。入試会場の熱気とは裏腹に、受験市場では18歳人口が再び減少に向かう時期にさしかかっている。2020年には約40年ぶりの大学入試改革が控える。学習塾・予備校にとっては再々編のゴングがいつ鳴ってもおかしく状況なのだ。

ピークは2月3日 280校で入試

 入試のピークは3日(土)で、全国約280校で予定される。私立大学(604校)の半数近くに達する計算だ。5~10日までは100校台の3ケタで推移し、その後次第に数が少なくなり、下旬からは国公立の2次試験がある。例えば、関関同立入試は2月第1週に集中し、早慶入試、MARCH校入試は翌週半ばに本格化する。まずは受験生の志望校突破を祈りたい。

 毎年受験生を送り出す学習塾・予備校など受験産業にとって最大の関心事となって久しいのが少子化の影響だ。それを端的に示すのが高校を卒業する18歳人口。1992年に200万人を超えていた18歳人口は、2008年に120万人台まで減ってが、その後は120万人台の低位安定をキープしてきた。それがここ数年のうちに再び減少に向かう時期にささかかっているのだ。大学進学率も52%程度と頭打ちにある。こうした中、学習塾・予備校では業界再編が繰り返される可能性が一段と高まっている。

「代ゼミ・ショック」。大手予備校の代々木ゼミナール(高宮学園)が全国に展開していた27校を本部(東京)、大阪、名古屋、福岡など7校に集約するリストラを断行したのは2014年のこと。代々木ゼミナールは河合塾(河合塾)、駿台予備学校(駿河台学園)と並ぶ3大予備校の一角を占める。

18歳人口が再び減少期に。逆風強まる学習塾・予備校

 大学への入学者数は約60万人。このうち浪人は現在8万人ほどで、8人弱に1人が浪人。2000年当時は入学者が現在と変わらないにもかかわらず、浪人は12万人と5人に1人の割合だ。1985年までさかのぼると、何と2.5人に1人が浪人だった。こうした浪人市場をほぼ独占してきたのが大手予備校。気がつくと、風向きは一気に逆風に転じていた。

 背景にあるのが18歳人口の減少に加え、バブル崩壊による親の所得環境の悪化などでランクを下げてでも入学する現役志向の強まりだ。予備校ならでは集団授業よりも、グループ指導や個別指導へニーズが移ってきたことも見逃せない。

「Z会」の増進会、大型M&Aで栄光ゼミナールを傘下に

 代ゼミ・ショックと同じ2014年、「東進ハイスクール」を擁するナガセ<9733>は大学予備校の早稲田塾を傘下に収めた。ただ、生徒集めに苦戦するなど、早稲田塾は2017年8月、校舎の約半数にあたる11校を閉鎖した。付け加えれば、ナガセは中学受験で有名な四谷大塚を2006年、子会社化した。これに追随するかのように、代ゼミの高宮学園も2009~2010年、小中学生対象の「SAPIX」をグループに加えている。

 2015年には、通信教育「Z会」を運営する増進会出版社が栄光ゼミナールホールディングス(現ZEホールディングス)をTOB株式公開買い付け)で完全子会社化した。集団指導で定評のある学習塾「栄光ゼミナール」を傘下に収めたもので、買収金額が137億円にのぼる大型M&Aでもあった。さらに2017年、関東を地盤とする増田塾を子会社化した。

 通信教育「進研ゼミ」を展開するベネッセホールディングス<9783>は2006年、大学受験予備校のお茶の水ゼミナールを、翌2007年に東京個別指導学院を相次いで子会社化した。2012年には東証2部上場で京阪神を中心に学習塾を手がけるアップを子会社化した。

 参考書大手の学研ホールディングス<9470>は2017年3月、市進ホールディングス<4645>の株式を追加取得(出資比率31%)し、持分法適用会社とした。さらに、学研HDは早稲田アカデミー<4718>、「明光義塾」の明光ネットワークジャパン<4668>の学習塾2社にも主要株主として名を連ねる。地方展開の一環として2013年には、全教研(福岡市)を買収した。

 首都圏ではほかに、難関大予備校として定評がある「四谷学院」(ブレーンバンク)、中高一貫による55段階別指導を売り物にする「TOMAS」(リソー教育<4714>)などが存在感を発揮し、まさに群雄割拠の様相を呈している。

法人名 M&A関連の動き
高宮学園(代々木ゼミナール) 2009年 「SAPIX中学部」を買収
  2010年 「SAPIX小学部」を買収
  2014年 全国27校から7校に集約
ナガセ(東進ハイスクール) 2006年 中学受験の四谷大塚を子会社化
  2014年 大学受験予備校の早稲田塾を子会社化
増進会出版社 2015年 栄光ゼミナールHDにTOBを実施し、子会社化
  2017年 私大文系専門の増田塾を子会社化
ベネッセホールディングス 2006年 大学受験予備校のお茶の水ゼミナールを子会社化
  2007年 東京個別指導学院を子会社化
学研ホールディングス 2013年 福岡県地盤の学習塾、全教研を子会社化
  2017年 市進HDの株式を追加取得し、持分法適用会社化

2020年には40年ぶりの大学入試改革。その影響は…

 2019年、大学入試センター試験が廃止され、これを機に、入試制度と授業内容が大きく変わる。センター試験(当初は共通一次試験)が1979年に始まって以来の大改革だ。これまでは知識の暗記に重きを置きがちだった授業から脱皮し、蓄えた知識を使ってどう解決するかなど思考力や判断力、表現力が問われるようになる。2020年に新入試制度に移行するので、今春高校に入学する生徒が3年生になるタイミング。学習塾・予備校にとっても新カリキュラムへの対応は待ったなしだ

 18歳人口の減少、大学入試改革など新たな局面を間近に控え、学習塾・予備校をめぐる再編の靴音が再び高まることになりそうだ。

文:M&A Online編集部