緊急事態宣言明けにさっそく動きだした「JTB」と「HIS」その効果は?

alt
写真はイメージです

19都道府県に発出されていた緊急事態宣言が解除され、さっそくJTB(東京都品川区)とエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>の大手旅行会社2社が動き出した。

JTBは10月4日に本業の旅行業で、新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みか、PCR検査などで陰性の人に限定したツアーの販売を始めた。一方、HISは10月1日に新規事業として、農繁期に人材を派遣する人材派遣事業に乗り出した。

旅行会社はコロナ禍で大打撃を被っており、業績回復のための取り組みが、まさに緊急の課題となっているだけに、ワクチン接種率の向上や、行動制限の緩和などが進むにつれて、さまざまな動きが活発化そうだ。

JTBがPCR検査費用を負担

JTBは傘下のJTBメディアリテーリング(東京都文京区)を通じて、2021年10月~12月に首都圏を出発するツアーに、新型コロナワクチンを2回接種済み(出発14日前までに完了)か、PCR検査などの検査結果が陰性の人だけに参加者を限定する「ワクチン・検査パッケージ」を導入した。

参加者だけでなく添乗員やバス乗務員も、ワクチン2回接種済み者か陰性者で構成するのをはじめ、ワクチン2回接種済みの参加者には、JTB協定旅館ホテル連盟の協力で、JTB商品券3000円分をプレゼントするほか、PCR検査を希望する参加者には、JTBが検査費用を負担する。

ウイズコロナ時代に安心して旅行ができるにようにするとともに、ワクチン接種を奨励するのが狙いで、首都圏発ツアーに次いで、今後は関西発ツアーや中部発ツアーも販売する。

繁忙期のみに働き手を派遣

HISは子会社のグリーンオーシャン(東京都新宿区)を通じて、農繁期に人材を派遣する事業を立ち上げた。グリーンオーシャンは人材派遣事業に参入するために、2021年6月1日に設立した企業で、生産者には繁忙期のみ働き手を派遣し、働き手には季節ごとに繁忙期が異なる地域を通年で紹介する体制をとる。

農業は季節による業務の繁閑差が大きく、通年雇用が原則である技能実習生の雇用だけでは、人手不足の本質的な解決にならないと判断し、今回の仕組みを取り入れた。

コロナ禍が長引く中、コロナ前のように海外から外国人労働者を招くことが難しいため、当面は日本国内に在住する外国人労働者や、農業に関心のある国内の人材を派遣し、入国制限解除が見込まれる2022年以降は、世界各地で人材を募集する。

旅行会社はコロナ禍で業績が悪化しており、JTBの2021年3月期の売上高は前年同比71.1%減の3721億1200万円と大きく落ち込み、営業損益は975億5600万円の赤字(前年度は13億9300万円の黒字)に陥った。

HISも2020年10月期の売上高は同46.8%減の4302億8400万円で、営業損益は311億2900万円の赤字(前年度は175億4000万円の黒字)だった。

高まることが予想される旅行需要の取り込みと、懸念される人手不足への対応は、今後の両社の業績にどのような影響を及ぼすだろうか。

文:M&A Online編集部