止まぬ旅行業への逆風!JR北海道が「ツインクルプラザ」を閉鎖

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JR北海道は2022年2月までに、個人向けの旅行商品や航空券・宿泊券などを販売する「ツインクルプラザ(JR旅行センター)」の全店舗を閉鎖する。併せて「ツインクルデスク」での旅行商品の電話販売も終了し、個人向け旅行販売サービスから撤退する。

ネット予約に押されて取扱高が7割減

JR北海道は日本国有鉄道(国鉄)から分割民営化された1987年にツインクルプラザをオープンしており、33年間にわたる歴史に幕を閉じることになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大で北海道の旅行需要は激減しているが、今回の決定とは関係ない。

旅行業界では価格比較が容易で、24時間365日アクセス可能な旅行予約アプリやウェブでの販売がシェアを伸ばし、これに伴い既存のリアル旅行代理店を通さない取引が急増している。

ピーク時は27カ所で展開していたツインクルプラザも、現在は札幌、札幌南口、釧路、帯広、旭川、函館の6店舗にまで縮小した。ツインクルプラザの旅行取扱高は2010年度に174億円だったが、2019年度は55億円と約70%も減少する見通し。2019年度には6店舗合計で約2億6000万円の単年度赤字を予想している。

倒産減の一方で休廃業増、M&Aでの事業承継は厳しく

こうした状況からJR北海道ではツインクルプラザの収支改善は難しいとして、個人向け旅行販売サービスからの撤退を決めた。一方、法人向けの旅行販売を手がける「法人旅行札幌支店」の営業は継続する。

東京商工リサーチによると、2019年の旅行業界の倒産は件数が前年比7.4%減の25件、負債総額が29.9%減の14億2100万円と、1999年以降の過去20年間で最も少ない。とはいえ「休廃業・解散」の件数は123件と倒産のほぼ5倍となり、高い水準で推移している。

長期低迷する旅行業界だけに今後の成長が見込めず、行き詰まる前に休廃業や解散を選択する企業が多数を占めているようだ。倒産や休廃業・解散に追い込まれた旅行業者の大半は従業員5人未満の零細企業で、M&Aによる事業承継は厳しい。

逆風が吹き荒れる業界にもかかわらず、2019年1〜12月の旅行業界でのM&Aは3件しかなかった。今後、コロナウイルス感染症の拡大による旅行自粛の影響で、経営破綻や休廃業する旅行業者が急増しそうだ。

旅行業界でのM&A(2019年1月〜12月)
公表日 取引総額 内  容
5月30日 非公表 エボラブルアジア(現・エアトリ)<6191>、ハワイ旅行専門のセブンフォーセブンエンタープライズを子会社化
5月30日 非公表 ヒト・コミュニケーションズHD<4433>、訪日外国人旅行者向けランドオペレーター業者のトライアングルを子会社化
12月27日 非公表 第一交通産業<9035>、中国専業旅行社の西日本日中旅行社を子会社化

M&A Online調べ

文:M&A Online編集部