(3) ガバナンスの脆弱性については、付け加えることは何もないだろう。オーナー企業の場合は、事実上経営者が全ての最終決裁権を持つ「人の支配」であり、「ルールによる支配」はないがしろにされがちだ。厳密な社内ルールが定められていても、オーナー経営者が容易にひっくり返せるようであれば、ガバナンスは極めて脆弱になる。
社内ルールの恣意的な変更は、同族経営の大企業でも起こりうる。例えばトヨタ自動車では創業家出身の豊田章男前社長の報酬が9億9900万円と前期実績を3億円以上も上回ったが、内規によると利益や株式の時価総額が下がったことから引き下げられることになっていた。しかし、同社がこの内規を変更して大幅増額した事例がある。
(4)マスメディアの沈黙については、そもそも中小零細企業ではニュースバリューがないため、オーナー企業の弊害が伝えられることはない。大企業であっても業績が好調な場合、ガバナンス不全が生じていてもその弊害が取り上げられることはほとんどない。
ただ、大企業では業績の急激な悪化や、明らかな法律違反が生じた場合は批判的に大きく報じられる。大手スーパーのダイエーや総合家電の三洋電機で同族経営の批判報道が本格的に始まったのは、経営破綻の直前になってからだった。ビッグモーターの同族経営批判も、損害保険の不正請求が明らかになってからである。
逆の見方をすれば、もっと早い段階で同族経営によるガバナンス批判の報道がなされていれば、経営危機を迎える前に何らかの改善策が打てた可能性もある。現実には、マスメディアによる批判を極端に嫌う大手企業のオーナー経営者も少なくない。
こうしたオーナー経営者には好都合に見える「マスメディアの沈黙」も、ガバナンス不全で経営破綻した企業にとっては「不幸」なことかもしれない。ジャニーズ不祥事の調査報告書は、すべての同族経営企業にとって「他山の石」となる貴重な情報なのだ。オーナー経営者には一読をお勧めしたい。
文:M&A Online
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金融庁が2022年度に納付命令を発出した課徴金額が、過去5年で最多の33億4053万円に達した。前年度(6億3148万円)の5倍を超えている。また今年度の累計件数は、前年度比7件増の26件となった。