【公認会計士監修】事業譲渡(じぎょうじょうと)|手法解説

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【公認会計士監修】M&A手法解説「事業譲渡(じぎょうじょうと)」

会社の特定事業(特定部門)を売りたい・買いたいときに行う「事業譲渡

会社をまるごと売買する「株式譲渡」に対し、会社の中身のみ、あるいは特定の事業部門のみを売買するのが「事業譲渡」です。複数の事業を手がけている企業が、一事業(部門)のみ切り離したい場合に、よく行われる手法です。旧商法では「営業譲渡」と呼ばれていました。

【図解】事業譲渡の流れ

事業譲渡は売買契約ですので、欲しい資産を選択することができます。これが事業譲渡の最大のメリットです。店舗の売却、土地・建物などの有形固定資産、売掛金や在庫などの流動資産のほか、無形資産や人材、事業ノウハウなども譲渡対象となります。

しかし許認可などの取引契約などは引き継ぐことはできないため、個別の同意が必要となり、手続きが煩雑となります。また従業員についても個別の同意が必要となります。

事業譲渡で事業の全てを買収することもできますが、株式譲渡と違い、譲渡代金は会社(売り手企業)に入るため、オーナーの手元にはお金が残りません。

売り手企業の事業全てを買収する場合には、原則として株主総会特別決議(3分の2以上の賛成)が必要となりますが、以下のいずれかの場合は、株主総会決議が不要となります。

1.事業の一部譲渡の場合で、売り手企業の帳簿価額が総資産の20%以下である場合
2.事業の全部譲渡の場合で、売り手企業の帳簿価額が純資産の20%以下である場合
3.買い手企業が売り手企業の総株主の議決権を90%以上を有する(特別支配会社)場合

上記1.2を「簡易事業譲渡」、3を「略式事業譲渡」といいます。

事業譲渡のメリット・デメリット

メリット
・引き継ぐ資産・負債を限定できるため、簿外負債を引き継ぐリスクを排除できる

デメリット
・取引契約や賃貸借契約など個別に移転手続きが必要なため、再手続きが面倒・煩雑になる
・譲渡代金は会社に入るため、売り手企業のオーナーの個人の手元にはお金が入らない

この記事は、公認会計士の監修のもと作成しております。

監修:公認会計士・税理士 高野新也/編集:M&A Online編集部