新規相談がコロナ禍前を超える 東京都事業承継・引継ぎ支援センター

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東京商工会議所に設置されている「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」は5月11日、2021年度の相談実績を公表した。新規相談社数は新型コロナウイルスの感染拡大前を上回る1000件台に達し、事業承継に対するニーズの根強さを証明した。

新規相談社数1002件、売却ニーズの伸びが顕著

東京都事業承継・引継ぎ支援センターの2021年度新規相談社数は前年度比151社、18%増の1002社で、2019年度実績(908社)も上回った。2回目以降の相談を含めた総相談件数は2019年度(1567件)には及ばなかったが、前年度比188件、16%増の1365件まで回復した。

■新規相談件数推移

単位:社 新規相談社数(計) うち譲渡 うち譲受 その他
2021年度 1002 370 611 21
2020年度 851 210 575 66
2019年度 908 315 513 80

「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」2021年度相談実績より作成

総相談件数の内訳は譲渡(売り手)が547社、譲受(買い手)が777社で、前年度(譲渡337社、譲受751社)と比べて譲渡側の伸びが目立つ。コロナ禍の収束が見通せない中、事業環境が悪化した企業の相談が増えたとみられる。

■相談件数推移(継続案件含む)

単位:件 相談件数(計) うち譲渡 うち譲受 その他
2021年度 1365 547 777 41
2020年度 1177 337 751 89
2019年度 1576 589 875 112

「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」2021年度相談実績より作成

成約件数86件、前年度並みを維持

また、事業承継の成約件数は2019年度比11件増の86件で、2020年度(90件)並みの水準まで持ち直した。

同センターは「コロナ禍の状況は続いているが、ポストコロナ・ウィズコロナを見据え、事業承継の動きが活発化している。連携する金融機関からの相談件数も増えている」と説明。事業承継を模索する活発な動きが今後も続くと予測している。

休廃業企業の黒字割合が大幅減

東京商工リサーチによると、全国の2021年(1~12月)休廃業・解散企業は過去最多だった前年から10%余り少ない4万4377件。ただ、件数自体は過去3番目の高水準で、当期損益が黒字だった休廃業・解散企業の割合も初めて60%台を割り込んだ。

こうした状況から、コロナ禍で事業環境が悪化しながら給付金や貸付金などのコロナ関連支援で延命している企業が多い実態も見えてくる。貴重な経営資源の散逸を防ぐ上で、事業承継・引継ぎ支援センターに求められる役割の重要性がさらに高まりそうだ。

中小PMI支援で中小企業診断協会と連携

経済産業省が47都道府県に開設している事業承継・引継ぎ支援センターは、第三者承継支援の「事業引継ぎ支援センター」と親族内承継支援の「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、2021年4月から活動している。

2022年度は中小M&A実施後の経営統合(PMI)を支援するため、中小企業診断協会との連携を開始。地域の実情に応じて相談企業に中小企業診断士を紹介するほか、中小PMIに関する人材育成など組織的な取り組みにも乗り出す。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」2021年度相談実績(東京商工会議所)
中小企業の事業承継・引継ぎ支援に向けた 中小企業庁と一般社団法人中小企業診断協会の連携について (METI/経済産業省)