中小企業基盤整備機構(中小機構)は6月9日、全国47都道府県(48カ所)にある「事業承継・引継ぎ支援センター」の2021年度実績を公表した。相談者数、成約件数とも10年連続で最多を更新、相談者数は初めて2万者を突破した。
2021年度の相談者数は、前年度の1万1686者より78%も多い2万841者に急増。2020年度までの旧事業引継ぎ支援センターを地域の事業承継のワンストップ機関としてリニューアルし、中小企業経営者に対する事業承継診断支援などを拡充した効果が表れた。
第三者承継(M&A)の成約件数は前年度比135件、10%増の1514件で、譲渡側の93.1%は売上高1億円以下の小規模企業。2020年度の売上高1億円以下の割合(62.3%)と比べると、新型コロナウイルスの影響が深刻化した2021年度は30%余りも増えた。業種別はサービス業・その他28.4%、製造業24.8%、卸・小売業20.7%、建設工事業13.6%など。
コロナ禍で全国に緊急事態宣言が出された2020年度当初はセンターの利用が低調だったが、通年では回復。2021年度も右肩上がりを維持し、累計の相談者数は8万1032者、成約件数は6470件となった。
創業希望者と後継者不在の中小企業の橋渡しを担うため、2020年度にすべてのセンターに設置された後継者人材バンクの2021年度登録者数は1368者(前年度比14件増)。成約件数は53件(同17件増)で、いずれも過去最多だった。累計登録者数は5617者に上り、うち187件が成約にこぎつけている。
また、2020年度まで国が民間企業に委託し、2021年度からセンター事業として実施している事業承継診断件数は22万3880件(前年度比38%増)で、親族内承継を中心とした事業承継計画策定支援件数は3万4337件(同2%増)、承継時の経営者保証解除支援件数は2647件(同52%増)だった。
過去最多の実績が並んだことについて、中小機構は「コロナ禍の中でも事業承継の支援ニーズは大きい」と説明。ただ、2016年度から5年連続で前年度比200件台の上積みを重ねてきた成約件数の伸びが鈍化しており、単年度、累計とも成約の10倍を大きく超える数の相談者を事業承継に結び付ける方策が急務になりそうだ。
文:M&A Online編集部
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令和3年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について 事業承継・引継ぎ支援センターの成約、相談件数ともに過去最高