ガソリンスタンド存続に政府が補助金交付へー効果は期待できる?

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過疎地からガソリンステーションが消える(写真はイメージ)

一般に「ガソリンスタンド」と呼ばれるサービスステーション(SS)が政府から「絶滅危惧種」とみられたようだ。経済産業省が2022年度予算の概算要求で、経営危機に直面している過疎地のSS向けの補助金に14億円を要求するという。読売新聞が伝えた。

「給油所過疎地」問題に対応する政府

それによるとSS店舗の集約や移転、自治体が設置して民間に運営を委託する公設民営型SSなどに補助金を交付する。併せてコンビニエンスストアや飲食店などとの併設など、経営多角化による収益性の強化も促す。

経済産業省では給油所(SS)が3カ所以下の市町村を「給油所過疎地」としており、2012年度末は全国で253市町村だったが、2019年度末は332市町村と増え続けている。同省ではSS過疎地では自動車だけでなく、農機具の給油や移動手段のない高齢者への灯油配達など地域の生活に支障をきたすと警鐘を鳴らす。

すでに宮城県七ヶ宿町や和歌山県すさみ町などで休業した給油所を町が譲り受けて地元の事業者に運営を委託する公設民営方式で運営を継続したり、岡山県津山市や高知県四万十市などで住民出資の新会社が撤退したSSの経営を引き継いだりする「SS存続」の動きが出ている。新たに概算要求する予算は、こうした取り組みを支援する。

しかし、こうした手法で存続するSSは経営基盤が弱く、ガソリンや灯油などの販売価格が割高という課題も。現在、島しょ部に限定されている都市部と販売格差を埋めるための補助金を出す「ガソリン流通コスト対策事業費」の交付なども考えられそうだ。

SS支援の政策効果は「期待薄」

もっとも、少子高齢化で過疎地の運転者人口減とガソリン燃料車の燃費性能の向上によるガソリン消費減の「ダブルパンチ」で、補助金頼みのGS経営は長続きしないと予想される。むしろSS過疎地での電気自動車(EV)購入の補助予算を増額した方が、住民の足を確保する上では有効ではないか。

SS過疎地の岡山県西粟倉村では農業用水で発電する出力5キロワットの小規模小水力発電所のほか、村役場や高齢者生活福祉センター前、道の駅「あわくらんど」などにEV用の無料急速充電器を設置。町民にEVシフトを促している。

すでに充電インフラやEV購入の補助金制度はあるが、SS過疎地向けに増額するなどの政策誘導があれば現地でのEVシフトは進むはずだ。SS過疎地は市町村の面積も広い。1自治体に1カ所のSSを残しても、そこから遠い場所に住んでいるドライバーには不便だ。EVならば時間はかかるが、充電スタンドに出かけなくても自宅でも充電できる。

先細りが確実なガソリンスタンドを生き残らせるよりも、EVシフトに向けた補助金制度の方が中・長期的な政策効果がありそうだ。

文:M&A Online編集部