高島屋、自社物件の立川店から撤退!進む百貨店の「不動産業化」

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高島屋<8233>が自社物件から撤退する。4月11日、立川高島屋ショッピングセンター(東京都立川市)内に出店する「高島屋立川店」の営業を2023年1月31日に終了すると発表した。同店は1970年に開業し、1985年に現在地へ移転。2018年には同店の売場を食料品・化粧品・宝飾品・婦人服などに縮小し、ニトリやユザワヤといった専門店を誘致して現在のショッピングセンターにリニューアルした。

「百貨店冬の時代」立地を生かして生き残る

しかし、すでに長期低迷していた百貨店事業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行でさらに深刻な打撃を受け、立川店の閉店に踏み切る。同店の空きスペースには新たな専門店を誘致し、100%専門店のショッピングセンターとして営業を続けるという。高島屋としては同ショッピングセンターで百貨店事業から撤退し、テナントからの家賃のみで稼ぐ不動産業に特化する形だ。

高島屋は2019年に日本橋店(東京都中央区)を、都市再開発事業で日本橋髙島屋三井ビルディングにリニューアル。百貨店と専門店街、オフィスなどの複合ビルとなった。

都心一等地の地の利を生かした複合ビル「日本橋髙島屋三井ビルディング」(三井不動産ホームページより)

百貨店事業の復活が期待できないために、都心繁華街という百貨店ならではの「地の利」を生かした経営多角化の一貫だ。一等地の専門店やオフィスであれば入居を希望する企業も多く、家賃収入で確実に利益を得られる。

高島屋の場合、2021年2月期の百貨店事業利益率は-3.7%の赤字だったが、日本橋店付近でのオフィスビルの期待利回りは+3.7%と、大きな差がついた。「百貨店冬の時代」での有望な生き残り策なのだ。

いずれはテナントオンリーの「名ばかり百貨店」も

エイチ・ツー・オー リテイリング<8242>も阪神・阪急百貨店の両本店をリニューアルした大阪梅田ツインタワーズ(大阪市)で、本格的な百貨店とオフィスの複合ビルに参入。小田急電鉄<9007>も2029年度に小田急百貨店( 東京都新宿区)を商業施設とオフィスの複合ビルにリニューアルする。

2022年2月に竣工した複合ビル「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(阪神電鉄ホームページより)

セブン&アイ・ホールディングス<3382>が売却を検討しているそごう・西武でも、入札に参加する企業やファンドは西武池袋店(東京都豊島区)などの大型店舗の商業施設とオフィスの複合ビルへのリニューアル狙いとみられている。

高島屋「立川店」のように、商業施設を保有したまま百貨店事業から完全撤退するのは珍しい。だが、百貨店事業の収益性低迷が続いており、今後は自社店舗のリニューアルで百貨店から完全撤退するケースも増えそうだ。不動産事業で成長が持続できれば。いずれ全店舗で百貨店事業から完全に撤退し、不動産事業に特化した「名ばかり百貨店」が登場するかもしれない。

文:M&A Online編集部

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