「マツダよ、お前もか…」。マツダ<7261>が、ロシア極東のウラジオストクでの現地生産から撤退する交渉に入ったことが分かった。日本車メーカーではトヨタ自動車<7203>が9月23日にロシア西部のサンクトペテルブルク工場を閉鎖し、ロシアから撤退すると発表している。相次ぐ日本車メーカーのロシア撤退だが、世界戦略で痛手にならないのか?
マツダは2012年にロシアのソラーズとウラジオストクに合弁工場を設立し、SUV(スポーツ多目的車)を生産していた。2021年は約2万9000台をロシア向けに生産している。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、今年4月から部品不足で操業を停止していた同工場での生産再開は難しいと判断した。
ロシアからの生産撤退で、マツダは打撃を受けるのだろうか?実は大きな影響はない。マツダの同年の世界生産台数は107万4987台だったので、ロシアでの生産シェアは約2.7%にすぎない。しかも日本から主要部品を輸出して現地では組み立てるだけのノックダウン生産だったので利益率は低い。
トヨタは2007年にロシア・サンクトペテルブルグで、セダン車「カムリ」の生産を開始。ロシアではノックダウン生産だったうえに、2021年の生産台数も世界生産のおよそ1%弱の約8万台と少ない。同社にも大きな影響はなさそうだ。
このほか日産自動車<7201>、三菱自動車<7211>、いすゞ自動車<7202>もロシアに生産拠点を置いているが、4月以降は稼働停止状態にある。いずれも稼働再開の見通しは立たず、近く撤退することになりそうだ。そもそも日本車メーカーがロシアへ相次いで進出した背景には、欧米諸国との関係が良好な2000年代に資源輸出でロシア経済が成長していたという事情があった。
ロシアの自動車市場は2008年に約312万5000台まで成長するが、リーマンショックの影響で2009年には約140万台と半分以下に減少した。その後、日本を含む外資系自動車メーカーの進出で2012年には約288万6000台まで回復したものの、資源価格の下落や2014年のクリミア併合による欧米諸国からの経済制裁、ルーブル下落などで自動車市場は縮小した。
ウクライナ侵攻で欧米諸国からの経済制裁は長期化が避けられず、これ以上ねばってもロシアの自動車市場が本格的に復活するのは相当先のことになる。ノックダウン生産で撤退が容易という事情もあり、日本車メーカーは脱ロシアにハンドルを切ったようだ。
ロシアには最大手のアフトワズをはじめ、マツダと合弁を組んだソラーズやウアズ(UAZ)、イジマシ、ジル(Zil)、セアズ、タガズ、アフトトル、アフトフラモスといった乗用車メーカーが存在する。しかし、外資系自動車メーカーのノックダウン生産が主力で、自力での生産能力は低い。
外資系自動車メーカーの生産が停止した2022年5月のロシア国内生産は、前年同月比96.7%減の約3万7000台に激減している。プーチン大統領は同月、ロシア国内の自動車産業の支援策を打ち出すよう指示を出しており、国内技術で自動車生産を維持する方針だ。そのためには自動車産業の集約は必須で、ロシア車メーカーのM&Aが加速するだろう。
文:M&A Online編集部
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