日本が環境問題で国際的な批判にさらされている。理由は地球温暖化の元凶である二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電を推進しようとしているからだ。なぜ、日本は天然ガスや石油に比べて二酸化炭素の排出量が多く、先進国では廃止が相次ぐ石炭火力発電にこだわるのか?
資源エネルギー庁によれば、石炭は石油よりも価格が安く、利用可能な資源埋蔵量が多いからだという。しかし、石油価格は今でこそ高いが、少し前には「持って行ってくれればカネを払う」マイナス価格になったのは記憶に新しい。石油価格は乱高下するのだ。
戦前ならば日本国内にも炭鉱が多数あり、石炭ならある程度は自給できた。しかし、採算性の問題もあって国内炭鉱の閉鎖が相次ぎ、現在は国内で利用されている99%以上が輸入炭だ。輸入に頼らざるを得ないのは、石油も石炭も同じなのだ。
戦前の1939年、化学的に石炭を分解して石油に似た炭化水素油を製造する石炭液化を目指して北海道人造石油(北海道滝川市)が設立されたが、1952年6月に後継企業の滝川化学(同)が経営破綻した。現在でも研究開発は進められているが、日本政府が石炭液化をにらんで石炭火力を推進しているわけではない。では、なぜ「石炭」なのか?
石油の最大の問題は、ガソリン消費量の減少だ。石油製品は原油を沸点別に分留してガソリンや灯油、軽油などを生産する。現在、石油製品のうち約23%をガソリンが占める。このガソリンが自動車の燃費改善やハイブリッド車(HV)の普及などで消費量が減少している。
将来、電気自動車(EV)が普及すれば、石油製品の中で最も大量に利用されるガソリンの需要が減り、「石油離れ」が加速するのは間違いない。なぜなら石油製品は「連産品」であり、ガソリンの生産量を減らせば発電用燃料となる重油の生産も連動して減ることになる。ガソリンだけ減らして、重油はそのままというわけにはいかないのだ。
余ったガソリンは廃棄物となり利益を生まないために、残る石油製品のコストは上がる。つまり石油火力発電の燃料となる重油はガソリン消費の減少で生産量を減少するか、大幅な値上がりに見舞われる。あるいは、その両方かもしれない。
石油は、そう遠くない未来に調達が難しくなる資源なのだ。石炭は液化しない限り、そのまま利用される。つまり、長期安定して利用できる化石燃料なのだ。一方、火力発電による二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスは、欧州を中心に需要が急増しており、争奪戦が激しくなっている。
日本が電気エネルギーを安定的に確保するため、最もリスクが低いのが石炭火力発電なのだ。ただ、石炭火力発電には、地球温暖化という大きなリスクがつきまとうことを忘れてはならない。
文:M&A Online編集部