コロナ禍でゲーム関連のM&Aに動き 2022年のIT・ソフトウエア業界

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写真はイメージです

2022年のIT・ソフトウエア業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術による生活やビジネスの変革)化の進展に伴い、医療やセキュリティ、マーケティング、EC(電子商取引)、暗号資産などさまざまな分野でM&Aが実現。件数、金額ともに高水準で推移した。

12月5日時点での同業界のM&A発表件数は146件で、2012年以降の10年間で、過去最多を更新した2021年にほぼ並んでおり、12月の状況によっては5年連続で過去最多を更新する可能性がある。

2022年の全業種のM&Aは873件(12月5日時点)で、IT・ソフトウエア業界は全体の16.7%を占め、全業種のトップの件数となった。

一方、金額は7555億円で、日立製作所やパナソニックホールディングスなどの大型M&Aがあった2021年(2兆2451億円)には遠く及ばないものの、こちらも2013年以降の過去10年では3番目に位置する規模だった。

そうした中、金額トップ、4位、10位にゲーム関連の案件が入っており、コロナ禍の中、ゲーム市場が拡大していることがうかがわれた。

また、売り手の業界は、IT・ソフトウエア以外が90%ほどを占めた一方、買い手の業界は、IT・ソフトウエア以外が41%ほどだった。

このことから異業種の親会社がIT・ソフトウエア企業を手放し、同業のIT・ソフトウエア企業が事業や業容の拡大のために、企業買収を進めている姿が浮かび上がってきた。

外国企業がからむクロスボーダー取引は15件で、クロスボーダー比率は10.3%に留まった。全業種のクロスボーダー比率15.8%と比べると、IT・ソフトウエア業界は、外国企業との関連が薄く、国内中心の事業であることが分かる。

ソニーがプレイステーション拡大に5000億円を投入

2022年の金額トップはソニーグループが、ゲーム子会社の米ソニー・インタラクティブエンタテインメント(カリフォルニア州)を通じて、米ゲーム開発会社バンジー(ワシントン州)の全株式を取得し、子会社化すると発表した案件で、買収額は37億ドル(約5140億円)だった。

世界的な有力ゲーム会社を取り込み、自社の家庭用ゲーム「プレイステーション」の利用者拡大につなげるのが狙いだ。

このほかゲーム関連では、スクウェア・エニックス・ホールディングスが、ゲーム開発の海外2社とソフト資産の一部をスウェーデンEmbracer Groupに389億円で譲渡した案件と、ケイブがスマホゲーム開発の、でらゲーを50億円で子会社化した案件が目を引いた。

ゲーム業界では1月半ばに、米マイクロソフトが米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表するなど、大型M&Aが実現しており、2023年も活発なM&Aが予想される。

金額の2位は米投資ファンドのカーライル・グループが、経済ニュースメディア「NewsPicks」などを運営するユーザベースの完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を行うと発表した案件で、買付代金は最大614億円。

ユーザベースは2009年に企業の財務、株価や統計データを取り扱う経済情報プラットフォーム「SPEEDA」のサービスを始め、2013年に経済ニュースメディア「NewsPicks」を立ち上げた。

金額の3位は、総合コンサルティング会社のアクセンチュア(東京都港区)が、データソリューション事業を手がけるALBERTに対して子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した案件で、買付代金は最大424億円。

成長戦略の加速に向け、AI(人工知能)やデータ分析に精通したデータサイエンティストと呼ばれる専門人材を獲得するのが狙いだ。

文:M&A Online編集部