【IT・ソフトウエア】DXの流れが強まる中、M&Aの件数、金額ともに過去最高を更新

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デジタル技術で生活やビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが強まる中、2021年(2021年1月1日~12月26日)のIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は165件で、2012年以降の10年間では年4連続で過去最多を更新。全業種のM&A件数871件の18.9%を占めた。

取引金額も大きく膨らみ、2012年以降の10年間で最高だった2016年の1兆2239億円を大きく上回る2兆2510億円に達し、過去最高を更新した。

日立製作所のM&Aは全業種のトップに

金額トップの日立製作所<6501>が米IT企業のグローバルロジック(カリフォルニア州)を子会社化するのに投じた1兆422億円は、全業種のトップでもあった。また2位のパナソニック<6752>が、サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の子会社化に投じた7830億円は、全業種の4位に食い込んだ。2020年のIT・ソフトウエア業界の金額トップが2380億円だったことを考えると、まさにケタ違いの規模となった。

株式の非公開化などを目的にしたMBO(経営陣による買収)も8件(1件は不成立)に達し、金額ベスト10内に3件が入った。2020年もMBOは11件あったが、ほとんどが金額非公表だったため、こちらも金額が一気に膨らんだ。

MBOの最高額は262億円

日立によるグローバルロジックの買収は、同社としても企業買収としては過去最大となった。グローバルロジックは2000年に設立した企業で、顧客企業の競争力強化のためのソフトウエアの設計や開発などを手がけており、世界14カ国に約2万人の従業員を抱える。日立は同社の子会社化で、ITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDXを世界規模で加速するという。

パナソニックはブルーヨンダーの買収で、顧客企業の生産性向上などに向けたサプライチェーンマネジメントサービス(SCM)を強化し、世界規模で事業拡大につなげる計画だ。ブルーヨンダーは3000社を超える顧客基盤を持ち、AI(人工知能)やML(機械学習)をベースとしたSCMサービスを提供している。

またMBOで金額が最高だったのは、マッチングアプリ運営のイグニス<3689>が米投資会社ベインキャピタルと組んで株式を非公開化するのに投じた262億円。イグニスが主力とするスマートフォン向けアプリの開発や運営を巡る競争環境は目まぐるしく変化するため、非公開化して、機動的で柔軟な意思決定を可能にすることにした。MBOは成立し、同社は6月に上場廃止になった。

【2021年(2021年1月1日~12月26日)IT・ソフトウエア業界のM&A取引金額上位10件】

順位 案件 金額
1 日立製作所、米IT企業のグローバルロジックを子会社化 1兆422億円
2 パナソニック、サプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダーを子会社化 7830億円
3 ソニーグループ、米国子会社のゲーム部門「GSN Games」を米スコープリーに売却 1100億円
4 野村総合研究所、DXサービス大手の米Core BTSを子会社化 523億円
5 ブリヂストン、車両運行管理サービスの米アズーガ・ホールディングスを子会社化 428億円
6 楽天グループ、通信ネットワーク用ソフトウエア企業の米アルティオスター・ネットワークスを子会社化 400億円
7 電通グループ、ネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスを子会社化 326億円
8 イグニス、米国ベインキャピタルと組みMBOで株式を非公開化 262億円
9 AOI TYO Holdings、米カーライル・グループと組んでMBOで株式を非公開化 213億円
10 [不成立]パイプドHD、MBOで株式を非公開化 143億円

文:M&A Online編集部