アップル「iPhone12」の小型モデル、正体は「SE3」か

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米アップルが2020年秋に投入する「iPhone12」に、小型モデルが存在するとの観測が高まっている。ディスプレーサイズが6.7インチモデル、2機種の6.1インチモデルに加えて、5.4インチモデルが投入されるというのだ。

小型スマホ人気が高まりつつある

5.4インチモデルは本体前面のほぼ全てがディスプレーとなる「枠なし」のため、本体は4インチだった初代「iPhone SE」と同サイズとみられている。大画面化を進めてきたiPhoneでは初めてのダウンサイジングとなる。

2016年3月に発売された初代「iPhone SE」は大きくなりすぎたiPhoneを持てあます女性ユーザーを中心に人気を集め、2018年9月の公式発売終了後も同サイズでのモデルチェンジを求める声が多かった。そして2020年4月に、満を持して2代目の「iPhone SE」が発売される。

CPUに現行の「iPhone11」と同じ「A13 Bionic」チップを採用しながら、価格は税別4万4800円からと「11」(同7万4800円から)や「11 Pro」(同10万6800円)よりもはるかに安いなど、初代「SE」と機能面のコンセプトは同じだった。

しかし、最も期待されたサイズは旧モデルの「iPhone8」をベースとしたため、4.7インチに大型化した。そこに「12」の小型モデルが投入されるとの見通しが報道され、「小さなiPhone」を求めるユーザーの期待が高まっている。

実際、スマートフォンはディスプレーの大型化競争が一段落し、逆に小型スマホのニーズが出てきた。国内第4の携帯キャリアとして新規参入した楽天モバイルの一番人気は、3.6インチのAndroid(アンドロイド)OSスマホ「Rakuten Mini」だ。アンドロイド搭載機では2.45インチのUnihertz 「Jelly Pro」や「Atom」など、さらに小さなミニスマホも存在する。

わずか2.45インチのミニスマホ「ATOM」(Unihertz ホームページより)

かつて携帯電話時代に国産メーカーが折りたたみ方式の採用などで大画面化競争を繰り広げる中、2004年にソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(現・ソニーモバイルコミュニケーションズ)が、わずか69gの世界最小端末「premini」を投入してヒット商品になったのと同じ流れだ。

5G化が「SE」の世代交代を早める

アップルの商品ラインナップは「11」のようなスタンダードモデル、「11 Pro」のような上級モデル、「11 Pro Max」のような上級大画面モデルの3本立て。当然、次世代は「12 Pro Max」(6.7インチ)、「12 Pro」(6.1インチ)、「12」(6.1インチ)となるはずで、5.4インチモデルが余ってしまう。

一部では「12」(5.4インチ)、「12 Max」(6.1インチ)、「12 Pro」(6.1インチ)、「12 Pro Max」(6.7インチ)との予想もあるが、大画面の「Max」シリーズを2機種投入するとは考えにくい。

そこで考えられるのは「iPhone SE3」の可能性だ。初代「SE」から現行の2代目「SE」の発売間隔が4年と開いているため、「SE3」の発売はかなり先とみられている。「平時」であればその通りだろう。だが、今は事情が違う。それは最新通信規格である5G化の流れだ。

今年のモデルチェンジで大型化した「SE」だが、わずか1年で再び小型化するかもしれない(同社ホームページより)

「12」シリーズは初めて5Gに対応する。アップルとしては全機種を5G対応にすることで、大量調達によるモジュールのコストダウンを図りたいだろう。さらにアップルは端末だけでなく、自社のApp Store経由でのアプリやサービスで利益をあげている。より多様で高度なサービスを提供できる5G化を、早期に進めたいだろう。

つまり、廉価版とはいえ「SE」を4Gのまま据え置く必然性はないのだ。ディスプレーを小型化することで5G化のコスト増を吸収し、廉価版として提供できるというメリットもある。次世代の5.4インチモデルが「SE3」であっても何の不思議もない。

アップルが今年の秋から冬にかけて一気に「SE」シリーズも含めた全モデルを5G化する可能性もある。が、おそらく「SE3」の投入は来春になるだろう。従来通り秋にメーンシリーズ、翌春に廉価版の「SE」シリーズを投入することで、端末生産の平準化が図れるからだ。今年5.4インチモデルの発売が見送られれば、間違いなく「SE3」として登場することになる。

文:M&A Online編集部