米アップルのスマートフォン「iPhone 12 mini」の販売が振るわない。小型の「iPhoneSE」の第1世代、そして第2世代が相次いでヒットしたため、「3匹目のどじょう」を狙って投入した12 miniだが、消費者には受け入れられなかったようだ。12 miniの「失速」で、SEの第3世代が登場する可能性が高まった。
米調査会社CIRPによると、12 miniは発売直後の2020年10月~11月にiPhone総販売台数のうち約6%しか売れなかったと分析。米市場調査会社Counterpointによると、2021年1月前半でもiPhone12シリーズ全体の5%しか売れておらず、販売不振は長期化している。JPモルガンは2021年第2四半期までに12 miniの生産が中止される可能性があると指摘した。
12 miniは標準モデルの「iPhone 12」を小型化し、価格を1万1000円値下げした機種だ。小型化して値下げといえば、SEシリーズ。第1世代、第2世代ともに新モデルよりも一回り小さい旧モデルの筐体(ボディー)を流用し、機能を最新にしたモデルだ。
アップルは「高級化路線」が基本で、格安のSEシリーズを事実上値上げしたモデルとして開発したのが12 miniだと考えられる。が、その「高級化路線」は消費者にそっぽを向かれたようだ。
相変わらず販売が堅調なSE第2世代と不振の12 miniをみれば、消費者はSEシリーズの小型化よりも低価格に魅力を感じていたことが分かる。SEシリーズはアップルの市場を拡大する「入門機」あるいは低価格のアンドロイドOS端末へのユーザー流出を防ぐ「防波堤」として重要な役割を果たす。
12 miniがその役割を果たせないのなら、SEシリーズの次世代モデルを発売するしかないだろう。SEシリーズは旧モデルのボディーに最新モデルの部品を換装するだけなので、大きな開発投資は必要ない。
(次ページに「iPhoneSE(第3世代)」の予想スペック表)
では、SEシリーズの第3世代は、どのような端末になるのか。これは容易に予測できる。前モデルの標準機種「iPhone11」のボディーに、iPhone12の機能を実装したモデルになるはずだ。コンセプトは昨年から発売が噂されている「iPhone SE Plus」に近い。
画面サイズは6.1インチと12 miniはもちろんのこと、SE(第2世代)よりも大きくなる。そもそもSEは低価格版ではあるが、小型版ではない。iPhoneシリーズはモデルチェンジごとに大型化されてきた。SEシリーズが「小型」なのは、コストダウンのためにボディーを流用した旧モデルが新モデルよりも小さかったからにすぎない。
画面は液晶のままだろうが、ロック解除は顔認証になる。背面カメラは広角と超広角のツインカメラとなるだろう。これはiPhone11のボディーを流用するためで、現行のSE第2世代と同じ指紋認証やシングルカメラのままだと、かえって改造コストがかかることになる。
CPUは今年前半に投入されるなら現行の「A14」、今年後半から来年以降なら次期「A15」の可能性もありそうだ。通信規格はiPhone11では第4世代(4G)だったが、コンテンツで高収益を目指すアップルにとって大容量データ通信は必要になるだけに、最新の第5世代(5G)に換装することになるだろう。
仕様(SE 第3世代は予想) | iPhone12 mini | iPhoneSE(第2世代) | iPhoneSE(第3世代) |
---|---|---|---|
画面サイズ | 5.4インチ | 4.7インチ | 6.1インチ |
ディスプレー | 有機EL | 液晶 | 液晶 |
通信規格 | 5G | 4G | 5G |
背面カメラ | 広角/超広角・1200万画素 | 広角・1200万画素 | 広角/超広角・1200万画素 |
CPU | A14 | A13 | A14またはA15 |
認証方式 | 顔 | 指紋 | 顔 |
防水性能 | 6mで30分間 | 1mで30分間 | 2mで30分間 |
記憶容量 | 64/128/256GB | 64/128/256GB | 64/128/256GBまたは128/256/512GB |
電池容量 | 15時間 | 13時間 | 17時間 |
最低価格 (税抜) |
7万4800円 | 4万4800円 | 4万5000円前後 |
SEシリーズの第3世代が発売されれば、「iPhone13 mini」が登場する余地が残る。もはやSEシリーズには低価格版としての役割しかなく、小型版のニーズに応えるには13 miniを投入する必要があるからだ。
文:M&A Online編集部