「M&Aは重要な手段」ロボットで業務の自動化を推進するオープングループの大角暢之取締役に戦略を聞いた

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オープングループ取締役 大角暢之氏

スマートロボット(RPA=ロボティック・プロセス・オートメーションやAI=人工知能)による新規事業創造、業務自動化事業などを展開するオープングループ<6572>は2024年6月に、クラウド型RPA「AUTORO」を開発、販売するオートロ(東京都港区)を子会社化したのに続き、同年10月には、給与計算代行業務を手がける、あすかペイロールプロ(東京都渋谷区)を子会社化した。

これ以前にも業務効率化ツール事業や会員制メディア事業を譲り受けるなど、M&Aには積極的だ。

そこで、2000年のオープングループ(当時はオープンアソシエイツ、2016年からRPAホールディングス)設立当初から経営に携わってきた大角暢之取締役に、同社のM&A戦略や2024年9月に立ち上げた新事業「共創開拓プロジェクト」でのM&Aの活用法などについて話を伺った。

この中で大角氏は「M&Aは重要な手段。今後も活発に行う」と前向きな姿勢を示した。

M&A候補はAIやIoT

―2024年に2件の企業買収に踏み切りました。M&A戦略の基本的な考えを教えてください。

オープングループの現在の主力は「インテリジェントオートメーション事業」と「アドオートメーション事業」です。今の日本は少子高齢化や労働生産人口の急激な減少などの問題を抱えており、このままでは多くの現場が継続できなくなります。

こうした社会課題の解決策として、24時間365日働くことのできるデジタルレイバー(デジタル労働者)を供給しています。

「インテリジェントオートメーション事業」はロボットで業務を効率化するもので、圧倒的なスピードで業務を行ってくれるソフトウエアのロボット「BizRobo!」「RoboRobo」シリーズを展開しています。

「アドオートメーション事業」は非効率な広告業界を変えていくもので、現在はオンライン広告関連の業務をロボットに代行させる「PRESCO」を手がけています。この二つの事業を拡充するためにM&Aを活用しています。

―2件のM&Aのそれぞれ具体的な狙いを教えてください。

オートロはロボットで業務を自動化するためのソフトウエアを手がけており、「ヒトの進化を共創する」というオープングループが掲げるビジョンと非常に似た考えを持っています。

我々と補完関係にあり、デジタルレイバーが働く環境を強化するために、経営の重要な手段の一つとしてM&Aを使いました。

もう一つのあすかペイロールプロは、給与計算代行業務を手がけています。給与計算はアウトソーシングが主流で、これらの業務を請け負う会社は、これ以上業務を増やせない状況にあります。

そこで、デジタル社労士(社会保険労務士)を作ろうということで、買収しました。こちらは高齢化された社労士の方の事業を継承していく計画で、既存サービスの「RoboRoboペイロール」と連携し、BPO(業務プロセスの一部を外部に委託すること)業務のデジタル化・自動化を推進するとともに、社労士が本来注力すべき労務顧問支援などの業務についても、両者の相互連携によってワンストップ対応できる体制構築を目指していきます。

―今後もM&Aは継続される予定ですか。

この二つの事業に沿って、今後もM&Aを活発に行う計画で、現時点でも具体的に検討している案件があります。分野としてはAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などが候補ですね。

価値のある大きな転機に

―買収だけでなく、譲渡されるケースが2023年に2件、2024年に1件ありました。これらについてはどのような判断があったのでしょうか。

目論みと異なり、買収の効果があまり出ていないケースですね。早めに判断し、譲渡を決断しました。

―オートロを買収されて4カ月ほどが経ちます。PMI(買収後の統合作業)はどのような状況でしょうか。

非常にうまくいっています。我々は、もともとはデジタルの会社ではありません。今でもそうなのですが、日本の未来のために一生懸命やっていきますよというのが企業文化で、ゼロイチ(0から1のビジネスを創り出す)に力を注いできました。

デジタルレイバーの事業化を進める中で、米国のある企業と意気統合し、完成したのが「BizRobo!」で、ここがデジタル事業の始まりです。もちろん、我々もソフトウエアを提供する以上、技術部門はありますが、専門家ではありません。

オートロは技術者の集まりで、高いレベルにあります。同社のグループ入りで、オープングループの技術レベルは格段に上がりました。オープングループはデジタル会社になったと言ってもいいくらいで、本当に価値のある大きな転機になるM&Aだったと思います。

ビジョンの共有が重要

―ところで、2024年9月に新事業として「共創開拓プロジェクト」をスタートされました。

「共創開拓プロジェクト」は人材の枯渇によって継続が困難になる産業や事業を、共創活動を通じて解決しようというもので、四つの波(取り組み)から成っています。

第一波では、在宅医療に関する情報の管理や受託などの業務、医療事務に関する各種書類の作成などをロボットで自動化することにしており、子会社のホスピタリティパートナーズ(東京都港区)を中心に進めていきます。

第二の波では国内のアントレプレナー(起業家)の拡大、第三波では米国のスタートアップ企業との連携、第四波では、人材不足に対応できるプラットフォーム(基盤)の構築を考えています。

これら四つの波はすでに同時進行しており、どこかで融合することになります。デジタルレイバーを使うことで、業務そのものを引き取っていくことを目指しています。

―こうした新事業でもM&Aの出番はあるのでしょうか。

医療でいえば、訪問看護の会社や医療機関などが対象になります。M&Aでなくても資本業務提携といったことも考えられます。

―医療以外の分野でも同じような取り組みは可能のように見えます。

自治体や小売業をはじめ、リクルーティングなどの分野でも可能性があると思っています。

―最後にM&Aを考えておられる他社の経営者の方にアドバイスはありませんか。

反省が結構多く、あまりおこがましいことは言えませんが、ビジョンが共有できるのかどうかは重要ですね。原点の部分が似ている場合は、うまくいくのではないかと思っています。

文:M&A Online記者 松本亮一


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