米インテル、買収した自動車用半導体子会社上場で大儲けの見通し

alt

大型買収した子会社の業績が上がらず、企業価値の下落に伴う「のれん代」負担で巨額損出…日本企業ではよく聞く話だ。どっこい米国企業は違う。米半導体大手のインテルは12月6日(米国時間)、車載半導体などを手がけるイスラエルの100%子会社モービルアイを2022年半ばに米国で上場させると発表した。

買収から5年で上場するモービルアイ

インテルは2017年に、自動車運転支援システム向けの画像処理半導体とサービスを開発するモービルアイを約153億ドル(約1兆7300億円)で買収した。モービルアイは世界の大手自動車メーカー30社以上から、過去最高となる41件の新規プロジェクトを受注し、2021年の収益は前年比40%増を見込んでいる。

こうした好業績が追い風となり、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると同社の企業価値は500億ドル(約5兆6800億円)を上回る可能性があるという。インテルは上場後も親子関係を維持するため、モービルアイ株の過半数保有を続ける。アムノン・シャシュア最高経営責任者(CEO)をはじめとするモービルアイの経営陣は、上場後も残留する。

関連記事はこちら
異常に価値が高い謎の会社 モービルアイ(Mobileye)
インテルの自動車関連ビジネスとM&Aまとめ
インテルがモービルアイを153億ドルで買収

モービルアイのシャシュアCEO(左)と、親会社インテルのパット・ゲルシンガーCEO(同社ホームページより)

仮にモービルアイ株の40%を市場で売却したとしても、売却額は200億ドル(約2兆2700億円)と買収額を上回る見通し。同社を買収したインテルは、なかなかの「M&A巧者」である。

自動車市場で存在感を示すインテルの「孝行息子」

インテルは半導体の性能を左右する微細化競争で台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などに遅れを取っており、旺盛な需要で活況を呈している半導体市場の「好況の波」に乗り切れていない。

インテルの株価も、この1年間で2%弱しか値上がりしていない。同期間に同業の米エヌビディア株が2倍以上、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)株が1.5倍近く上昇しているのと対照的だ。

モービルアイの上場に伴う株式売却で得た資金は、同社の半導体増産投資に充てる方針という。買収当時に比べると、同社の年間半導体出荷数や収益、従業員数は3倍近くにまで増加している。インテルは半導体の自社生産へ再びハンドルを切る方針を明らかにしており、モービルアイの自動車向け半導体もその一翼を担う。

完全自動運転車への道のりはまだ遠いが、自動走行や緊急自動ブレーキといったドライバーの運転を支援する機能は標準装備化されつつある。自動車部品は巨大市場だけに、ある程度のシェアを獲得できれば大きな収益を見込める。モービルアイはインテルにとって「孝行息子」に育ったようだ。

大きな収益が期待できる自動車用半導体に、インテルの期待も大きい(同社ホームページより)

文:M&A Online編集部