社会人1年目で学ぶ、「ビジネスマナー」。
一度身につければ大丈夫、と思っていませんか?
今回は「ベテラン社員のマナー」をテーマにお届けします。
なぜベテラン社員か?なぜマナーなのか?ベテラン社員におけるマナーの学び直しが組織の今後に大きな影響をもたらします。ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
昨今、ベテランに対して改めてビジネスマナーを強化したいというニーズが高まっています。
その理由として「接する相手がより重要な人物になる」「影響力が大きくなる」など立場上必要に応じた場合と、「慣れによるマナーの劣化」「目下に囲まれる中でつい横柄になる」などのマイナス面を理由とする場合もあります。
また、イギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィンの名言の中に「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」という言葉があります。
リスキリングの観点からも、新人時代に身につけたマナーにとらわれず、時代や状況に合わせたマナーを身につけアップデートすることが重要です。
時代が移り変わっても、マナーの基本は変わりません。「相手の信頼を得る」ため、それにふさわしい立ち居振る舞いや礼儀が求められます。
■第一印象が大事
ベテラン社員が外部の人と接するのは、大事な商談や重要な折衝、あるいはクレーム対応といったデリケートなケースであることが少なくありません。若手が対応する場合と異なり、組織を代表する存在として認識されることが多々あるため、重要性も増します。
特に「清潔感」は非常に大切です。清潔感は「仕事ができそう」「要望を叶えてくれそう」といった前向きなイメージに直結します。清潔でないことは逆の印象を与えてしまう結果となり、ひいては組織全体として不信感を抱かれてしまうこともあります。
<人の印象をつくる主要要素>
■手本となる立ち居振る舞い
信頼感を感じさせる笑顔
相手の目をしっかりとみることは、コミュニケーションをとるうえでとても大切です。口もとは口角を上げ、歯が少し見える程度に開くと自然な笑顔になります。
口角を上げるとセロトニンが分泌され、精神の安定につながります。心が落ち着き、ゆとりが生まれると相手に信頼感を感じさせることもできるのです。
体幹を意識して、動く~丹田に力を込める
緊張し過ぎたり、逆にリラックスし過ぎたりすると不安感や不遜な印象を持たれてしまいます。堂々とした態度が相手に敬意を伝え、信頼感を生む第一歩です。
立ち方:
座り方:
あいさつ~あいさつに立場なし
あいさつは、部下・後輩からするものだと思っていませんか?この考えは大きな間違いです。ベテラン社員から率先してあいさつをし、あいさつをする文化が浸透していなければ、部下・後輩から自ら進んであいさつすることはほぼないと考えましょう。
よくある新人の声として、「あいさつは基本だと習ったから元気にあいさつしてみたが、返してくれる人は数人だった。しかもよく聞こえないような返事だった。」という残念な事実を耳にします。このような状況が続けば、新人はあいさつをすることをやめてしまいます。
職場内の人間関係を良好に保つには、あいさつは欠かせません。相手を認識し、コミュニケーションをとるための第一声だからです。ぜひご自身からの元気なあいさつをこころがけてください。
■礼儀正しさ
笑顔を絶やさない
笑顔は話しやすさや親しみやすさを増幅させます。ビジネスにおいて話しやすいことは、新たな業務を得る機会に繋がり、自分自身のビジネスパーソンとしてのレベルを向上させます。
相手を尊重する
職階や年齢、性別により対応方法を変えることは、相手にも伝わります。対応・態度は誰に対しても同様に、一人ひとりを尊重して接しましょう。
相手の話を聴く
相手を尊重する姿勢として、話を聴くことはとても大切な行動です。相手が伝えたい・話したいと思う気持ちが高まり、その気持ちが信頼感を生み出します。
礼儀正しさは、面白いほどに伝播します。
私が転職して今の会社に入社し、初めて配属された部署では、上司が部下から相談された際の返答の一言目が「ありがとうございます」という言葉でした。
「ありがとうございます」には「この業務に取り組んでくれて/考えてくれて/質問してくれて」など、部下の仕事に対する様々な取り組みを全て受け入れる思いが込められており、とても好感を持ったのを覚えています。
また、そこで働く人々はその姿勢を尊重し、見事に全員が相手に対して同様の対応を取るようになっていました。これは上司が「そうしなさい」と指示したのではなく、部下がそれぞれの判断でその行動を尊重した結果だと言えます。こうして生み出された職場環境が、より良い職場づくり・後輩育成へとつながるのだと実感した体験でした。
■安心感と包容力を与えるコミュニケーション
心理的安全性
心理的安全性とは、「メンバー一人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言できる、自然体でいられる環境・雰囲気」のことを指します。グーグルの4年に及ぶ大規模な調査の結果、"心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要である"と発表され、日本でも注目されるようになりました。
<心理的安全性を高めることのメリット>
①クリエイティブ(創造的)な発想が出やすい
②主体的な行動を促しやすい
③若手が成長しやすい
④活気が生まれる
心理的安全性の高い職場は「メンバー全員仲が良く、意見の対立はなく、居心地が良い」と誤解されることがありますが、違います。
意見の違いをネガティブにとらえることなく、活発に議論し合えるような職場こそ心理的安全性が担保され、ひいては成果を生み出すことができるようになります。
ベテラン社員には、心理的安全性を担保し、安心感と包容力を周囲に与える存在になることが求められているのです。
自己開示のすすめ
心理的安全性の高い職場をつくるための第一歩は「自己開示」です。
自己開示は、互いを理解し支え合う素地をつくることができ、安心感を生み出します。また、多様な人材が協働するチームでは、メンバーそれぞれが異なる課題や希望を持ちながら働いています。そういった課題や悩み、希望を開示できない職場では、無理をしたり居心地の悪さが積み重なったりして、メンバーの離職にもつながります。
年長者であるベテラン社員から自己開示を行うことが、コミュニケーションを構築する第一歩となります。一方的な自慢話や成功談でなく自らの失敗経験を開示すると、親近感を得られるだけでなく、後輩のチャレンジ精神を育成することにもつながります。
チャレンジ精神醸成のポイント
・メンバーが失敗したら、必ずフォローする
・ミスした人を非難・批判せず、現状起きている問題の解決策を示し、一緒に取り組む
・同じミスが今後起きないようにするための改善策を一緒に考え、具体的な取り組みに落とし込む
人は誰しも、できるなら失敗したくないものです。特に現代の新人・若手の多くは「失敗するくらいなら挑戦しない」と考える傾向があります。
しかし、成長には「挑戦すること・失敗すること」が欠かせません。メンバーの気持ちに寄り添いながら、「失敗しても良いから挑戦すること」が職場に根づくような環境を作っていきましょう。
■世の中を理解した相応しい発言
不用意な発言
自身が若手時代の「当たり前」だったことが、今では「非常識」ととらえられることが多々あります。以下のような状況を招きかねない発言には注意を払いましょう。
<注意すべきシチュエーション>
不用意な発言は信頼感を低下させる
不用意な発言をしてしまうことで、発言した本人に対してはもちろんのこと、所属する組織への印象にも影響を与えてしまいます。信頼を築き上げるのには時間がかかりますが、崩れるのは一瞬です。そして、一度失われた信頼を取り戻すには時間も労力もかかります。
発言する前に立ち止まる
自身の常識や感覚を過信せず、発言する前に一度「この発言は相応しいのか(発言して問題ないのか)」を自問自答しましょう。深呼吸で考える時間を設けることで発言内容を客観視することができ、相応しいか否かを判断することができます。
伝えるときは肯定表現を活用
職場での発言や表現は、周囲で働く人の心理に影響を与えます。コミュニケーションをとる際には、肯定表現を意識しましょう。
ポジティブな言葉が飛び交う職場は、コミュニケーションが活性化します。ネガティブな言葉の多い職場は相談やホウレンソウが減り、雰囲気が悪くなるだけでなく、次第にトラブルを生み出すことにつながりかねません。常に相手への配慮や思いやり、尊重し合うように心がけましょう。
最初の問いに戻ります。社会人1年目で学ぶ、「ビジネスマナー」。一度身につければ大丈夫、と思っていませんか?
これまで求められた「ビジネスマナー」にとどまらず、これから求められる「ベテランマナー」へと進化する必要性についてまとめてみました。
ベテラン社員は、各組織の中でも重要な戦力であり、今後更なる活躍が期待される存在です。
社会人として生きてこられた時代背景や、様々な壁を乗り越えてきた経験がベテランとしての風格を築き上げているのは間違いありません。
その経験を、どのようにして今の時代に活かしていくかが、今後の組織の繁栄に大きな影響をもたらします。
影響力の強いベテラン世代こそ、時代に合わせたマナーを身につけ実践することが求められます。そして、そうした日頃の行動が会社の雰囲気と次世代育成につながるのです。
ぜひ、素敵なベテランのマナーで職場づくりから改革を起こしていただければと存じます。
株式会社インソース より