前回に引き続き、「健康経営®」についてお伝えする第2回目です。
そもそも、病気やケガによって従業員の健康が損なわれ、所定の労働ができなくなることは、生産性に直接マイナスの影響を与えます。従業員の健康が生産性に与える影響度を示す指標として、以下の2つが注目されています。
アブセンティーズムは、欠勤・休職日数や疾病休業者数・日数などの数字を集計すれば比較的簡単に計測できます。プレゼンティーズムを数値化するのは一見難しそうですが、よく用いられるのが、「病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として過去4週間の自身の仕事をパーセンテージで評価する」という計測方法です(※1)。仮に自部署のメンバーの回答の平均が80%だとしたら、20%の労働損失が発生していることになります。
アブセンティーズムは目につきやすいために問題として意識されやすいですが、プレゼンティーズムは気づくことが難しく、知らぬ間に職場の生産性を落としてしまったり、症状を悪化させてしまうことにもなりかねません。具体的な病名がつく状態になったら医師による治療が必要ですが、それ以前の「何らかの体調不良」にある従業員をケアすることが、健康経営の第一歩と言えます。 。
経済産業省がまとめた「健康経営オフィスレポート」(※2)によると、プレゼンティーズムの発生には以下3つの健康問題が関係しているとされています。
➀運動器・感覚器障害(頭痛、腰痛、肩こり、眼精疲労)
②メンタルヘルス不調(メンタルストレス、ワーク・エンゲイジメント(働きがい)、うつ病)
③心身症(動機・息切れ、胃腸の不調、食欲不振、便秘・下痢)(※心身症の内、ストレス性の内科疾患)
そして、これらの健康問題を解消するために、次のような行動への取り組みが推奨されています。
①に効く行動(体を動かす、適切な食習慣)
②③に効く行動(コミュニケーション、休憩・気分転換)
しかし、これらの行動がよいとわかっていても、職場でいきなり一人だけ体操を始めたり、業務に集中しているメンバーを休憩に誘ったりすることは気が引けるものです。そこで、取り組みを個々にゆだねるよりも、全社一斉で時間を決めて行うなどの工夫をすることで、より高い改善効果が見込めます。
メンタルヘルス不調をそのままにしていると、心身症の発症にもつながりやすく、プレゼンティーズムの状態が長く固定化してしまいます。メンタルケアの一環として、前述のように「気軽に話す」や「共同で作業する」などのコミュニケーションが推奨されていますが、職場の中には気軽に雑談をしたり、大人数で話したりするのが得意ではない人もいるかもしれません。
「今日も一日誰とも話さなかった......」という人がいないよう、意識的に声をかけることを心がけている管理職やリーダーも多いと存じます。しかし、業務が立て込んでつい忘れてしまうこともあるでしょう。そこで、月に1回30分、難しいようであれば、まずは月1回10分でも、メンバーと話す時間をスケジュールとして組み込んでしまうのも一つの手です。短いインターバルの中で面談を重ねることで、お互いの心理的な距離が近づき、深い信頼関係を築くことができれば、職場で気軽に話すことのハードルも下がっていきます。
さらに、メンバーの業務状況をタイムリーに把握でき、「今」の状況に合わせた的確なアドバイスが行えるようになることで生産性向上につながりやすいというメリットもあります。
1.全社でラジオ体操
毎日実施することで、日頃の運動不足解消やフロア内のコミュニケーション活性化につながっています。
2.散歩会
身体を動かすことでリフレッシュしつつ、様々な部署のメンバーと散歩を通じて交流することで、仕事面においてもコミュニケーションを取りやすくなっています。
3.昇降機能付きテーブルの設置
座っているとつい姿勢が悪くなりがちですが、立つことで心身をリフレッシュできます。また、普段と異なる環境で会議を行うことで様々なアイデアが出やすくなったり、会議時間の短縮や議論の活発化につながる効果も出ています。
株式会社インソース より