ハラスメント防止研修を語る~ハラスメントをなくし、心理的安全性の高い職場に導くヒントとは(前編)

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働く現場での価値観が大きく変わる中、ハラスメントに対する意識も年々高まっています。特に近年は、立場のある人の不用意な発言が大きな問題となるケースも増加。この記事では、ハラスメント防止研修の現場で見えてきた最新の傾向と、私たちが無意識に抱える偏見や価値観のアップデートについて、対談形式で掘り下げていきます。

◆対談者

小林(WEB制作部門)
安西(テキスト作成部門)
村上(テキスト作成部門)

不適切な発言が許されない時代です

小林:本日は「ハラスメント」についてお話していきます。インソースの研修でも、ハラスメント関係は毎年実施回数がトップ5に入る人気のテーマであり、特にここ5年ぐらいでニーズが大きくなってきました。

ハラスメントについては1985年に男女雇用機会均等法の制定を機にセクハラへの注目が集まり、以降も長きにわたり、働く上での課題となっています。そこで、まずはハラスメント問題の最新の傾向について、この分野のテキストを作成している安西さんに話を聞きたいと思います。

安西:最近は取締役や社長など、上位の役職の方々の不適切な発言に関するニュースが多くなってきました。そのため研修で基本的な知識を学ぶだけではなく、リアルな事例を知って危機意識を持つべきだというのが、近ごろの傾向としてあるようです。

小林:社長はもちろん役員クラスでも、外部で発言をする際は「そのまま公開されても大丈夫な内容か」を常に意識しているかと思います。それに加えて、今は組織内部であっても不適切な発言があれば関係者がネットに上げてしまう事例もあるので、自身の発言に対しては場所を問わず、問題がないよう注意が必要です。特に立場がある人にとっては、周囲から向けられる評価の目も厳しくなった気がします。

安西:以前であれば「ああいう人だからこの発言も仕方がない」とスルーされてきた事でも、今は許されない時代になってきました。時代の流れを知り、価値観のアップデートをしていかないと、そういった発言ひとつでも組織としてのリスクになりかねません。

小林:昔は情報発信源がマスメディアに限られていましたから、そこに載らない限り問題視されませんでした。しかし今は誰でも情報を拡散できるので、何が世の中に晒されるかわからない怖さがありますね。

古い価値観や偏見がハラスメントを生み出す

小林:具体的な発言内容で「こういった事が、今どきは問題になりやすい」という例がありましたら、教えていただけますか?

安西:何気なく言ってしまいがちなのは、やはりジェンダー関連が多いと思います。例えばマタハラですとか「男なのに」「女なのに」といった決めつけや、「父親は育児に関わらなくてよいのでは」などもありますね。

人は自分の持っている価値観を前提として発言し、過剰な保護をしてしまう場合があります。本人が活躍したいと望んでいることに対し、周囲がそれぞれの価値観から発言してストップをかけてしまう事例も多くあります。

小林:お子さんがいる女性に対して、管理職が不用意に気を使って重要な仕事をさせない、などがそれに当たりますね。また、ジェンダー関連の発言は異性に対するものをイメージしがちですが、同性同士でも「もっと男らしくしろよ」など決めつけで発言していることもあります。

安西:一緒だと思いますね。そもそも男と女というくくりでいいのか疑問ですし、主語を勝手にカテゴライズして話すのは、危険かと思います。

小林:性別は関係なくその人を見る、というところは大事ですね。ただ、気を抜くと出てしまうことはあると思います。

安西:ふとした時に出てしまうのは致し方ないところで、おそらくなくならないと思います。しかし、そんな中でも知識として「そういう発言はいけない」というのを、知っておくことが大事ですね。

小林:そういう不用意な発言の根幹には、個人的に偏った考えや見解を持っている「アンコンシャスバイアス」があり、これは各人で気をつけていかないといけません。それと似た言葉に「ステレオタイプ」というのがあり、こちらは社会通念として定着してしまっています。つい出ちゃう、というのはこっちの方で「男らしく頑張れ」とか「関西人なのに面白くない」「九州人なのに亭主関白じゃない」などですね。

※「ステレオタイプの脅威」については詳しくはこちら

安西:言った方は軽い気持ちかもしれませんが、言われた方は不快に思う人もいますよね。

小林:相手との距離を詰める時、共通の認識でいることを伝えようとして、誤って不快にさせてしまうケースも多い気がします。善かれと思って言ったら、それがステレオタイプだった、というような。

安西:周囲に同じような考え方の人が多い環境に長くいると、価値観がアップデートされにくいのかもしれません。弊社は比較的ダイバーシティが進んでいて様々な人が働いているので、多様な価値観に触れる機会が多いですが、そうでない場合は外部からの知見や働きかけがないと、自身で変わっていくのはなかなか難しいと思います。

株式会社インソース より

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