評価基準の本質は、一言でいうと「愛」です。
誤解されやすい表現ですが、ここでいう「愛」は、「部下を成長させたい」という気持ちのことです。上司が部下にマイナス評価を付ける場合は、上司にそれだけの「覚悟」がなければなりません。部下をマイナス評価するということは、「来期に必ず部下を成長させる」と宣言することと同じだからです。
上司はマイナスの評価をつけた部下を成長させるために、どのようなことをしなくてはならないのでしょうか?
それは評価や面談を通して、「なぜマイナス評価だったのか」「どのようにすれば評価が上がるのか」を、具体的に行動レベルで部下に伝えるということです。
とりわけ改善点は、現場の業務に即した行動のように具体的な形で、部下が理解・共有できる内容として伝えなければなりません。
求められる標準的な行動に即して、評価基準が次のような形で定められているとします。
実際にはこのような標準的な行動は職位や等級において定められていることが多いものです。
「同じ内容の質問は2回まで。指示内容を5W1Hでメモがとれる」(新人、理解力)
「グループレベルの現状の問題、課題を図や文書として具現化でき、半期に一回ごと改善できる」(20代後半、企画力)
「お客さま先に出しても大丈夫な議事録や報告書が書ける」(20代前半、表現力)
このような「求められる標準的な行動」として評価基準が立っていれば、評価者間のブレが少なく、評価される側との認識のズレも少なく、さらに部下に納得してもらいやすい評価を実現できます。
「求められる標準的な行動」という具体的な基準で、部下に対し評価面談を行います。具体性や共有性の高い面談は、納得性の高い評価につながり、評価される部下の来期にかけるモチベーションが上がります。
「あなたは今期、このような仕事をしましたが、あなたの職位でいうと、それでは不足で、このレベルまでやって、やっと標準の評価です。残念ながらあなたには今回マイナス評価が付きました。しかし、来期このレベルまでやってくれれば評価が上がりますから頑張ってください」
こんな言い方を上司にされたら、部下は反省すると同時に、「次はやってやるぞ」という気持ちになるでしょう。会社に限らず一般的に、人は「他者の役に立ち、そのことが他者に認められる」ことによって、自らの存在意義を認識するからです。
組織で定められている人材要件をもとに、日常業務に即してブレイクダウンした、「求められる標準的な行動」を評価基準に定めます。しっかりした基準があれば、評価は感覚ではなく行動レベルで下され、FACT(日常的な行動・成果)を通じて伝えられると期待されます。「部下を成長させたい」という気持ちに立脚した評価基準こそ、評価者の姿勢の中心であると言えるのです。
株式会社インソース より