金融庁の課徴金額、過去5年で最多の33億円超え|2022年

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すでに前年度比5倍超、累計件数は26件

金融庁が2022年度に納付命令を発出した課徴金額が、過去5年で最多の33億4,053万円に達した。前年度(6億3,148万円)の5倍を超えている。金融庁は12月12日、店頭デリバティブ(金融派生商品)取引によるヤマハ株式の相場操縦など3件を行政処分しており、今年度の累計件数は前年度比7件増の26件となった。

中国拠点の資産管理会社が店頭デリバティブ取引で虚偽注文

金融庁によると、中国に活動拠点がある資産管理会社エボリューション・トレーディングは2018年4月、ヤマハ株を原資とする店頭デリバティブ取引で虚偽の買い注文を大量に出して相場を吊り上げ、取引成立前に取り消す「見せ玉」と呼ばれる相場操縦を行った。店頭デリバティブ取引での課徴金納付命令は初めてで、課徴金額は276万円。

売上金など架空計上のアジャイルメディアに6925万円

また、インターネット広告事業を手掛けるアジャイルメディア・ネットワーク<6573>には、2020年12月期の有価証券報告書などに虚偽記載があったとして、課徴金6,925万円の納付を命じた。同社は台湾の取引先に架空の売上金を計上したほか、ソフトウェア開発の事実がないにも関わらず、ソフトウェア仮勘定に資金を計上していた。

アマナにも虚偽記載で1650万円

金融庁はストックフォトサービスの提供やCM制作を手がけるアマナ<2402>にも、虚偽の有価証券報告書などを提出したとして課徴金1,650万円の納付を命じた。同社は2017年11月の四半期報告書で売り上げ原価を過少計上。2019年3月~2020年8月に提出した有価証券報告書と四半期報告書で売り上げ原価の過少計上と売り上げの過大計上を繰り返し、純利益や純資産額を偽った。

今年度全体の約7割は日産の虚偽記載への処分

2022年度の課徴金額の7割近くは日産自動車に係る有価証券報告書などの虚偽記載に対する課徴金納付命令決定の変更処分(22億2,489万円)が占め、過去5年で唯一の30億円台に達した。ジャパンディスプレイにおける有価証券報告書などの虚偽記載に対する納付命令(21億6,333万円)が出された2020年度の25億円9,968万円も上回っている。

日産自動車の変更処分を除いた課徴金額も、前年度の2倍近くの11億円余り。2018年度の12億1,289万円に並ぶ水準で、2019年度の4億5,458万円(日産自動車に対する変更処分前の課徴金納付命令決定を除く)の3倍近くとなっている。

内部者取引、虚偽記載、相場操縦が大半

2022年度の課徴金納付命令の件数は2018年度の41件、2019年度の48件(日産自動車に係る有価証券報告書などの虚偽記載を除く)に近付くペースで推移している。26件の内訳は内部者取引(インサイダー取引)9件、虚偽記載8件、相場操縦6件などとなっている。

文:M&A Online編集部

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