銀行に就職した人の多くの目標は「支店長」もしくは「部長」になることだ。一国一城である支店長もしくは部長に憧れて銀行に入ってくる人は未だに多い。
実際に、支店長や部長になれば年収は2000万円を超えるのも珍しくない。しかし、長引く低金利の影響で銀行の実態は今までになく、厳しい状況が続いている。今後、銀行から支店長や部長がいなくなる日も近いかもしれない。
そこで今回は、銀行の店舗で起こっている「管理職減らし」の実情について説明する。
現在、ほとんどの銀行ではリテール営業(個人客を相手にした営業)は大変苦戦している。法人業務のように取り扱う金額が大きくないため、それほどの収益を稼げないのと一人ひとりの顧客にきめ細かい対応が求められるため多くの人件費を割く必要があるからだ。
リテール営業は商業銀行である以上必要な分野ではあるが、大切なリソースを割くにはあまりにも不採算な部門である。そこで、メガバンクを中心に支店の管理職の人数を減らし始めているのだ。
今までは、大きな支店の場合、支店長、副支店長、営業課長、事務課長の4人が管理職として業務を行っていた。しかし、管理職は決して収益を生む存在ではないため、現在は、大きな支店でも、支店長と営業と事務をを統括する課長の2人しか管理職を置かなくなってきている。
2人の管理職を削減できるため支店数の多いメガバンクにとっては特にメリットが大きいといわれているのだ。
そして、人数を減らしてどうなったかというと、大きな影響がないとの意見が多い。なぜなら事務に関しては、事務センターにほとんどの事務を移管するようになり、支店で複雑な事務を行うことはなくなったからだ。
また、営業については元々、銀行の支店長や課長は投資信託などの商品性について疎いため、いてもいなくてもそんなに大きな影響はなかった。むしろ、収益を稼いでくれる営業の人数を増やしていることによって収益が改善されつつある銀行もある。
今後、さらにリテール部門の管理職が減っていくと予想される。ある銀行では近隣の10前後の支店をまとめたエリア単位に支店長を配置し、支店には課長のみにするという意見もあるようだ。
管理職の人数を減らし、営業員を多くすることによって今後銀行のリテール部門の収益は大きく回復する可能性がある。
そもそも銀行に入行する人は優秀な人が多く、管理職を必要としないケースも多い。営業力をさらに強化し人件費を削減することによって、今後、リテール部門は銀行の収益を経営する存在になる可能性もあるのだ。
今までの対面スタイルからオンライン面談をはじめとする効率の良い営業スタイルを確立されつつあり、今後、さらなる逆襲が期待される。
銀行は斜陽産業といわれて久しいが、まだまだ銀行の存在価値は大きい。融資はもちろんだが、投資についても銀行は証券会社よりもハードルが低いため相談しやすいと思っている方も多いだろう。
もちろん証券会社のような商品ラインナップを揃えることはできないが、投資の入り口としての銀行の役割は非常に大きいと考える。
本記事をきっかけに今後の現行の将来像について考えてみる機会になれば、幸いだ。
文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)