感染が止められないなら、経済活動を続けた方がマシのコロナ対策

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軽症者が多いオミクロン株の流行で、行政の対応も「ウイズコロナ」へシフトするか?(写真はイメージ)

過去最高の感染者を出した新型コロナウイルスの猛威を前に、ついに13都県で「まん延防止等重点措置」の適用が決まった。これまで同様、飲食店に営業や酒類提供の時間短縮を求める。しかし、従来と違うのは対象店舗に対策の選択ができるようになったことだ。

「選択制」の規制で飲食店の営業継続を支援

東京都の場合は「午後8時までの酒類提供と午後9時閉店」と「酒類提供なしで午後8時閉店」の二つ。そのほか神奈川県、愛知県、三重県、香川県、熊本県などが選択制を選んだ。感染力が極めて高いオミクロン株の感染防止のためには、一律の時間短縮と酒類の提供停止のセットが最も有効だが、度重なる営業自粛要請で飲食店は疲弊しきっている。加えて、国や自治体も自粛に応じた企業への協力金が大きな負担になっている。

さすがに、これまで同様の厳しい規制はできなくなった。それを後押しするのが、政府が設置した基本的対処方針分科会の尾身茂会長。「これまでの対策を踏襲するのではなく、オミクロン株の特徴にあったメリハリのついた効果的な対策が重要だ。人流抑制ではなく人数制限がカギになる」と、自治体の「選択制」による飲食店の営業および酒類の提供継続を容認する発言をした。

尾身会長は「4人くらいで静かに、話すときはマスクをしていれば店を閉める必要はない」と言うが、オミクロン株はマスクを着用していても短時間の接触で容易に感染する。ましてやマスクを外す飲食となれば、その場に陽性患者がいれば間違いなく感染すると言っていいだろう。

どうやっても防げないのなら…

尾身会長はさらに「飲食店だけで注意してもしかたがない」と発言。実はそこに答えがある。オミクロン株の感染を防ぐ手立てはない。もしあるとすれば、完全に人間同士の接触を断つロックダウン(都市封鎖)ぐらいだ。それですら完全に感染を食い止められる保証はない。

ならば経済活動を続けた方がマシではないか、という理屈である。現時点ではオミクロン株によるコロナ感染は軽症者(それでも体温が40℃を超えるケースもある)が多い。ワクチン接種完了率が約8割に達している日本ならば感染が拡大しても重症者は少ないとの「予測」も、こうした「ウイズコロナ(コロナとの共存)」に寄った自治体の対応に拍車をかけている。

オミクロン株以降も、新たなコロナ変異株が登場する可能性は高い。その度に厳しい行動制限や営業自粛を実施していたのでは、社会経済活動が成り立たなくなる。「ウイズコロナ」の第一歩となる、今回のまん延防止等重点措置。今後、新たな「緊急事態宣言」の発出に至らなければ、経済活動に大きな影響を与えることなく感染拡大をやりすごす手法として定着するだろう。日本がコロナ禍を乗り切れるかどうかの試金石になりそうだ。

文:M&A Online編集部

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