ECBがさらに様子見する間、ユーロ圏の信用状況は悪化

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Ira Kalish

Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト

経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。これまで47の国々を訪問したKalish氏の解説は、ウォール・ストリート・ジャーナル、エコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどからも広く引用されている。ジョンズ・ホプキンス大学国際経済学博士号取得。

ドイツを中心に企業・家計双方においてユーロ圏の信用状況が悪化

欧州中央銀行(ECB)の最新の銀行貸出調査によると、2024年の第1四半期において、ユーロ圏の信用状況は悪化しました。企業・家計双方の信用状況が悪化し、企業の融資需要が低下したことが背景にあります。これは今後数カ月の経済活動にとって良い兆候ではなく、ECBに早期の金融緩和を求める圧力が強まることが予想されます。

同期間において、融資を希望した企業へのユーロ圏における与信基準はわずかに悪化しましたが、これはもっぱらドイツでの悪化によるものであり、ユーロ圏の他地域での企業の与信基準に変化はありませんでした。一方、企業の融資需要に関して、ECBは大幅に減少したとしており、今後数カ月の投資支出は芳しくないことが示唆されます。

家計向けの与信に関してECBは「2021年第4四半期以降初めて、家計向け住宅ローン融資の与信基準が緩やかに緩和した」と報告した一方、「消費者信用の与信基準は一層引き締まった」とも述べました。ユーロ圏における消費者信用への需要はわずかに増加し、ドイツでの大幅増加をフランスでの大幅減少が相殺しました。

ECBは政策金利の据え置きを決定も、6月の利下げ転換を示唆

直近数カ月、ユーロ圏のインフレは大幅に減速しており、需要の低迷も続いていたため、ECBが近く基準金利の引き下げに踏み切るとの期待がありました。その期待はまだ残っていますが、4月11日に開催された会合では、政策金利を過去最高水準の4.0%に据え置くことを決定し、今後2カ月間は動きがないと想定されます。

この決定は全会一致ではありませんでした。ECBのラガルド総裁によれば、即時の利下げに賛成した委員は少数派であったとした一方で、6月会合にて利下げを検討することで大筋合意したと述べました。

金利据え置きの決定は予想外ではなかったため、資産価格が大きく動くことはありませんでした。興味深いことに、現在ユーロ圏のインフレ率は米国よりも急速に低下しており、市場は、2024年は米国よりもユーロ圏で利下げが進むと予想しています。現時点で、市場はユーロ圏で75bp(ベーシスポイント、1bpは0.01%)の利下げを織り込んでいますが、米国の利下げ幅の折り込みは50bp以下にとどまっています。加えて、ラガルド総裁は、ECBの利下げ時期の判断について、「米連邦準備理事会(FRB)の決定に依存しているわけではなく、あくまでデータに基づいて行われる」と述べました。しかし、「ECBはおそらく最初に利下げを行うだろうが、FRBが利下げの時期を遅らせれば、利下げのペースを鈍化させる可能性はある」とも付け加えました。

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