【現場の声】バイク専用駐車場運営のアイドゥトップが語る。M&Aをしてアーリーリタイアにした理由とは?

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※アイドゥ会長の池田寛和氏

首都圏32カ所で900台のバイク専用駐車場を運営するアイドゥ。“大型バイクを主軸としたセキュリティ完備の月極駐車場”というニッチなビジネスモデルは首都圏に住むバイクオーナーの救世主として安定した成長を果たした。業績好調の中、創業者の池田寛和氏は54歳となった2015年に事業を譲渡。アーリーリタイアを考えられた背景やM&Aに当たって感じたことなどを伺った。

いつまで会社経営をすべきか、自分が本当に望む人生は何か
――人生を楽しめる可能性を考え、アーリーリタイアを決意

アイドゥ創業の経緯を教えてください。

 私はもともとサラリーマンで、当時からハーレーダビッドソンやBMWといった海外メーカーの大型バイクに乗るのが趣味でした。自然とバイクオーナー同士が友人になりやすく、気がつけばフランクに話せる10年来、15年来の仲間ができていました。

 ところが、あるとき友人のバイクが盗まれるという事件が起きたのです。ショックでしたが、私はその友人とはきっとまた新しいバイクで一緒に走りに行けると思っていました。でも、彼は新しいバイクを買わず、仲間に戻ってこられなかった。買ってもまた盗まれてしまうのではないか――そう考えると、新しい大型バイクを買う気になれなくなってしまったそうです。彼はバイクを盗まれましたが、私たちにとっては大切な仲間を盗まれたようなものです。

 大切なバイクが盗まれないための設備とは……いずれ独立を考えていた私は、この出来事をきっかけに高度なセキュリティを有するバイク専用パーキングを構想し、仲のいいバイク仲間2名に共同経営者になってもらって、アイドゥを立ち上げました。

譲渡を検討するきっかけは何だったのですか?

 幸いなことに、アイドゥのビジネスは軌道に乗り、増やした駐車場はどこも赤字にならず、安定した収益が出せるようになりました。ただ、いつまで会社経営をすべきか、自分が本当に望む人生は何かを考えるようになりました。例えば70歳で会社を譲渡し、お金が入っても、その年齢ではセカンドライフを満喫する時間は限られます。身体だって今ほど健康ではないでしょう。いずれ会社を譲渡するにしても、50代、60代、70代、いつ譲渡するかによって人生を楽しめる可能性はまったく異なってくると思い、50代での譲渡を決めました。

譲渡に際し、希望された条件を教えてください。

 共同経営者である仲間のために経済的な条件は必要でした。ですから、M&A仲介会社の担当の方に「この金額以下だったら事業は売らない」と希望額を伝えました。会社の状況は良く、絶対に事業をやめなければならない理由もないので、条件が合わなければ保留することもできます。そういった意味では、お願いではなくきちんと主張できる立ち位置を保ちながらM&Aに臨めたと思います。

企業経営もM&Aも基本は「人」
人と人とのフィーリング、つながりが重要

複数のM&A仲介会社に相談した際、担当の方を選ばれたポイントは?

 ひとえに担当の方の人柄が良かったからです。企業経営の基本は「人」です。M&Aについても、会社と会社ではなく、双方の社長同士のフィーリングが重要だと思っています。そして、その人と人とをつなげるのも結局は人。ほかの仲介会社の中には、それを機械的にやったり、強引に取り持ちそうな、そんな不安を感じさせる人もいました。担当の方はしっかりと私の話や要望を聞き、理解した上で相手を探し、相手に伝えてくれました。

Web上にアイドゥのM&A情報を掲載したところ、
たくさんの問い合わせがありました。

 50社以上ものたくさんのお問い合わせをいただきました。あれは嬉しかったですね。少ないよりも多いほうが選択の幅が広がります。大手企業で興味、関心を示してくれたところもありました。担当の方に希望する条件を伝えつつ、お相手を選ばせていただくことができました。

1社目、2社目とのお話は途中で破談となり、
3社目で成約に至りました。

 1社目とは基本合意まで至らず、途中で流れました。2社目にはかなり興味・関心を持っていただき、M&Aも最後の最後まで進みましたが、最終的に先方が身を引かれる経営判断をされました。

 通常であれば、また新しい会社と時間をかけて協議しなければならないのですが、3社目と交渉を開始した1カ月後には、ほぼ合意まで進んでいました。私の要望を担当の方がきちんとくみ取り、お相手の細田(雄吾)社長が判断しやすいように立ち回ってくださったので、一気にお話を進めることができました。

アイドゥと池田様の今後について教えてください。

 私は会長という立場になりました。細田社長は何と言っても人がよい。31歳と若いけれど、ビジネス感覚に優れ、覚悟と実行力があります。そのような方なので、引き継ぎ期間は終わっていても、私も共同経営者たちも無償で手伝いたくなる。これは人と人とのフィーリングだと思います。

 現在は会長として、まずは細田社長の体制になってもきちんと利益を出し、実績をつくれるようにすることに注力しています。一方で、私自身はM&Aで得た資金と時間を活用して、次のライフスタイルを見つける旅に出たいと思っています。

本日はありがとうございました。

お話:アイドゥ 会長 池田 寛和 氏
M&A情報誌「SMART」より、2016年4月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部