「HIS」「JTB」「NTA」あの手この手の挽回策とは

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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大打撃を受けている旅行会社があの手この手の挽回策を打ち出している。

日本旅行(NTA、東京都中央区)は、SOMPOホールディングス<8630>、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、SOMPO Light Vortex(東京都新宿区)との間で、SOMPO Light Vortexが提供するワクチン接種証明・陰性証明アプリ「Light PASS」の推進に関して、業務提携契約を結んだ。

エイチ・アイ・エス(HIS)<9603>は、ワーキングスペースを予約できる法人向けスマートフォンアプリ「Workus」(ワーカス)を提供しているオファーズ(東京都千代田区)と連携して、東京都渋谷区内の営業所の一角をコワーキングスペースとして提供する。

JTB(東京都品川区)は、JR東日本グループのビューカードと提携し、全国のJTB店舗593店で「びゅう商品券」による支払いの取り扱いを始めた。

3社とも業績は厳しい状況が続いており、新型コロナウイルスの変異株オミクロンの感染拡大に伴い、本業の旅行事業がコロナ前の状態に戻る時期がさらに遠のいた状況で、当面はあの手この手の挽回策が続くことになりそうだ。

ワクチン、ワークスペース、商品券とさまざま

日本旅行はLight PASSと、日本旅行のワクチン接種運営サービスを組み合わせ、両社の強みを生かした総合提案で地域の安心、安全、健康に関するサービスの構築を目指す。

Light PASSは、スマートフォン上でワクチン接種履歴の管理や接種証明の表示ができ、クーポンなども受け取ることができるほか、ワクチン接種履歴だけでなく、PCR 検査などの陰性証明にも対応している。

日本旅行は、地域に密着した全国ネットワークの販売体制を生かし、全国の自治体にワクチン接種予約サービスやコールセンターなどの新型コロナワクチン接種運営サービスを提供している。

SOMPO Light Vortexは、SOMPOホールディングスの100%子会社で、デジタルを活用したサービス創出力の強化と新たな事業機会の獲得を通じた、新たな顧客価値の創造を目的に、2021年7月に誕生した。

HISとオファーズは、国内外の法人顧客を対象に、新たな働き方を支援することを目的に、2021年10月1日に業務提携し、両社の法人顧客を対象にWorkusの共同提案やサービス拡充に取り組んでいる。

今回は業務提携の一環として、HISの営業所の一角をWorkusのワークスペースとして活用を始めたたもので、まずは渋谷本店に併設している「変なカフェ」内の一角を提供し、潜在顧客層への認知拡大や、新たな利用機会の創出を目指す。

びゅう商品券はJR東日本のみどりの窓口のほか、全国の百貨店や家電量販店で利用できる商品券で、JRの駅ビル内をはじめ全国(沖縄県を除く)に店舗を持つ旅行会社では、唯一の取扱可能会社となる。

JR券、宿泊プラン、国内ツアー、海外ツアーをはじめ、現在各地で実施されている「地域観光事業支援(県民割)」の支払いにも利用できる。

JTBは、びゅう商品券の利用拡大を通じて、顧客の利便性を高めるとともに、利用店舗での安心安全な旅の提供を通じて観光地の活性化に寄与していく計画だ。

JTB、日本旅行は回復傾向もHISは悪化

HIS、JTB、日本旅行3社の業績は厳しい。HISは2021年10月30日に2021年10月期業績予想を発表し、営業損失が前年度の2倍以上の630億円に達すると発表した。当初は12月13日に決算発表を行う予定だったが、子会社による不祥事が発覚し、発表を延期している。

JTBが2021年12月19日に発表した2022年3月期第2四半期は、営業損失が前年度の半分ほどになったものの、331億円に達した。

日本旅行も8月27日に公表した2021年12月期中間決算では、営業損失が前年度の3分の1ほどの21億7600万円となったが、通期の見通しは新型コロナウイルスの影響を見極めることが困難なため未定としている。

文:M&A Online編集部