「ハイリスク・ハイリターン」のリスク(risk)は「危険」の意味ですが、保険の世界では「危険率、保険金額、被保険者」などの意味でも使われます。形容詞のリスキー(risky)は日本語化して、よく普通の会話で使われています。
元はイタリア語の "rischio"、さらにはギリシャ語にその語源を遡り、ギリシャ語では「断崖」を意味したようです。スペイン語の辞書を見ると "risco" (切り立った岩山)という単語が残っています。
「ハイリターン」の return(戻る)は、turn(回す)に接頭辞 re- がついたもので、もとはギリシャ語 "tornos" (円を描く道具)でした。いずれにしても「回る」イメージです。turn は大変意味の範囲の広い重要な動詞ですが、「ターンする」のように名詞としても日本語になっています。「ターニングポイント(turning point)」も「転換期」の意味で日本語化しています。
ビジネスの世界では基本用語の turnover(ターンオーバー)は、「売上高」「総取引高」「売上回転率」の意味です。この turn と姉妹関係にある語が、 tour(ツアー、小旅行)です。「ひと巡り」から「周遊旅行」の意味に転化したもので「中南米を一回りしてくるんだ」という表現に、その類似した発想をみることができます。「馬上試合」を意味した「トーナメント(tournament)」も、ここから派生した言葉です。
接頭辞 ad- がついて出来た用語に、attorney(弁護士)があります。lawyer(ロイヤー)とどう違うのかと思われるかもしれませんが、attorney は中立的な含みを持つイギリス英語であるのに対し、attorney はそれより好ましい意味合いが含まれる米国英語とされています。なぜ弁護士の意味になったかというと、困ったときには「他人にまわす」という発想からきているようです。
否定的接頭辞 de- がつくと「離れて向きを変える」ということから、detour(迂回)という語が、con- がつくと「共に回る」ということから contour(輪郭、外形)という語が派生しました。
文:猪浦道夫・天宮徹也(共同執筆)/編集:M&A Online編集部