経営者になりたい人を育てる「ネクストプレナー協会」河本和真代表理事に聞く

alt
河本和真グローシックスキャピタル取締役CFO兼ネクストプレナー協会代表理事

後継者がいない中小企業と、経営者になりたい人を結び付け、株式はファンドが買い取る「サーチファンド」と呼ばれる動きが広がりつつある。

そのサーチファンドの一つで、M&Aの仲介を手がけるGrowthix Capital(グローシックスキャピタル=東京都中央区)は、同社が設立したネクストプレナー協会を通じて、経営者になりたい人を探し出し、経営に必要な知識やノウハウを伝授する「ネクストプレナー大学」と名付けた経営者養成講座の運営に乗り出した。

グローシックスキャピタル取締役CFO(最高財務責任者)で、ネクストプレナー協会(東京都中央区)の代表理事である河本和真氏に、大学設立の経緯や事業承継までの流れ、さらにどのような人たちが大学に集っているのか、などについて聞いた。

日本式のサーチファンドを運営

-まずはサーチファンドとは何なのかお教え下さい。

経営者になりたい人が、投資家の資金を使って企業を買収し、バリューアップ(価値向上)したうえで、売却するというもので、売却によって投資家に資金が戻り、新しく経営者になった人も利益を得ることができる。

米国のスタンフォード大学のMBA(経営学修士)修了者が、投資家から資金を得て、2年間でいい会社を探し、いい会社が見つかると、さらに投資家が資金を出して企業を買収し、そこから4年から8年かけてその企業を成長させて、売却を目指すというのがサーチファンドの始まりと言われている。

-日本と米国では状況が大きく異なります。御社はどのようにサーチファンドを運営しているのですか。

2019年の冬に、サーチファンドのモデルをそのまま日本で見よう見まねでやってみた。ところが新しく経営者になった人が社長の重圧に耐え切れず、3カ月ほどで経営を続けられなくなってしまった。

サーチファンドは良い仕組みなので、これを生かすためには何が必要なのかと考えた結果、経営者になりたい人への教育、例えばマインドセット(経営者としての思考、覚悟)や、経営者としての最低限の知識、さらに彼らが困った時にサポートする機能、などが必要になるというところに行き着いた。

こうしたことを実現するために2020年9月にネクストプレナー協会を作った。同協会では、2020年11月にネクストプレナー大学の運営に乗り出し、0期生12人を受け入れ、現在は1期生40人が2021年6月から11月までの期間、受講している。

受講のあとは中小企業で3カ月から6カ月の実地研修を行い、マッチングを行う。実地研修先企業の経営を引き継ぐことを見込んでいるが、うまくマッチングできない時は、他の企業で再度実地研修を行う。ここが日本式サーチファンドの“ミソ”だと考えている。

年内に事業承継が実現する可能性も

-1期生はどのような方たちですか。

企業の部長クラスの方が10数%、それ以下の方が50%ほど、経営経験のある方が20%ほど、その他の方が10%ほどの構成で、いつか自分も経営者になりたいだとか、社長になりたいという夢を持った人たちが多い。

ただゼロから起業するのは、それなりのエネルギ―が必要だし、リスクもあるということで、中小企業の経営を引き継ぐことを目的にしたネクストプレナー大学に集まっていただいている。

-この仕組みで実際の事業承継が実現するのはいつごろでしょうか。

みなさん積極的で、すでに現職を退職し、すぐにでも経営者になりたいという人もいる。当初は受講が終わって、マッチング先を探す計画だったが、経営したい企業があるのであれば、受講中であってもマッチングの機会を提供しようと思っている。

いいマッチング先があれば、大学の受講と同時進行でやっていくことにしており、年内には事業承継が実現する可能性もありそうだ。

河本 和真(かわもと・かずま)氏 2014年、北海道大学経済学研究科会計情報専攻修士課程修了。在学中、ベンチャー企業の立ち上げに従事。2014年、野村証券入社。2017年、テック系M&Aアドバイザリーに参画。2019年、Growthix Capitalの創業メンバーに参画し、事業再生案件やクロスボーダー案件など幅広いディールを手がける。1989年生まれ、北海道県出身。

聞き手:M&A Online編集部 松本亮一編集委員