コンフォートホテルを運営するグリーンズが債務超過に転落

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コンフォートホテル横浜関内

ビジネスホテルを運営するグリーンズ<6547>が2021年6月期に88億300万円の純損失(前年同期は43億3,400万円の損失)を計上し、債務超過に転落しました。6月末時点での債務超過額は29億3,300万円。2020年6月末時点での自己資本比率は34.5%で純資産額は60億300万円でした。グリーンズは2020年1月から2021年7月末までで10ホテルを新規開業していますが、客室稼働率は依然として回復しておらず、赤字幅を拡大させる結果となりました。2023年6月30日までに債務超過を解消できない場合、上場廃止となります。宿泊需要の本格的な回復が見込まれるギリギリのタイミングであり、綱渡りの経営環境が強いられます。この記事では以下の情報が得られます。

・グリーンズの概要と客室稼働率
・コンフォートホテルの詳細

1年半で廃業した神戸のホテルをリブランドオープン

コンフォートホテルはチョイスホテルズジャパン(東京都中央区)が運営しています。グリーンズはアメリカのホテル運営会社チョイスホテルズインターナショナルとフランチャイズ契約を締結。日本でコンフォートホテルを展開するためにグリーンズが100%出資をし、2000年9月にチョイスホテルズジャパンを設立しました。

■グリーンズの事業内容

有価証券報告書より

グリーンズはチョイスホテルズ事業の他に、シティホテルを主体としたグリーンズ事業を展開しており、2020年11月にホテルメリケンポート神戸元町を新規開業しました。このホテルはもともとHotel meet Me 神戸元町として2019年1月にmeet Me(大阪市)がオープンしましたが、2020年6月に早くも閉館していました。その後グリーンズが賃貸借契約を結び、リブランドオープンしたホテルです。

グリーンズは新型コロナウイルス感染拡大が深刻化した後も、積極的にホテルを出店してきました。

■2020年1月から2021年7月末までに出店したホテル

開業時期 ホテル名
2020年7月31日 コンフォートホテル石垣島
2020年11月4日 ホテルメリケンポート神戸元町
2020年11月26日 コンフォートホテル松山
2021年1月8日 コンフォートホテル名古屋名駅南
2021年1月12日 コンフォートイン東京六本木
2021年3月24日 コンフォートホテル京都堀川五条
2021年4月8日 コンフォートホテル京都東寺
2021年5月17日 コンフォートイン京都四条烏丸
2021年5月20日 コンフォートイン福岡天神
2021年7月30日 hotel around TAKAYAMA

決算短信より筆者作成

2021年10月にコンフォートホテル名古屋金山、2022年春に高松市、2023年冬に三重県四日市市にも出店する計画を立てています。ビジネスホテルを運営する藤田観光<9722>は、2020年12月に10ホテルの出店改革の見直し、中止を決定しました。グリーンズはそれとは真逆の強気な姿勢を貫いています。

高利益で安定的な経営を続けていた

グリーンズは高利益体質のホテル運営をしていました。新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する前3期の営業利益率の平均は7.9%。藤田観光が運営するホテル事業の同時期の営業利益率の平均は6.0%です。

グリーンズは上場した2017年から出店ペースを上げ、客室数が急上昇しました。

■売上高と客室数の推移

2019年8月決算および中期経営計画説明資料より

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、2019年の全国のビジネスホテルの客室稼働率は75.8%。2019年6月期のグリーンズの客室稼働率は82.1%でした。主力のコンフォートホテルは83.8%です。グリーンズは出店コストを抑え、高い客室稼働率を維持することを得意としていました。

しかし、コロナで環境は一変します。2020年6月期の客室稼働率は63.3%、2021年6月期は54.1%となりました。

グリーンズは債務超過を解消するため、大規模な資金調達を行います。2021年10月に日本政策投資銀行が出資をするDBJ飲食・宿泊支援ファンドを引受先として、A種優先株式を発行して60億円を調達します。一時的に債務超過は解消される見込みですが、ポイントはコロナ禍がどこまで続くのかということです。

グリーンズは日本のレジャーが2021年10月、ビジネス需要が2023年1月、インバウンドが2023年8月ごろに回復すると予想しています。

■セグメント別客室稼働率の推移予測

2021年6月期決算説明資料より

この予測通りに進めば、2023年6月期の業績は2019年6月期を上回ることになります。もし、コロナの影響が長引けば、出店した分の運営コスト負担が重くのしかかります。強気の姿勢を崩さず新規出店を続けるグリーンズの戦略が吉と出るか凶と出るか、注目が集まります。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由