オミクロン株の流行拡大で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「第6波」が現実のものとなった。沖縄、山口、広島の3県に続き、19日には東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、岐阜、三重の1都6県に「まん延防止等重点措置」を適用する。しかし、第5波に比べると、知事たちは規制強化に及び腰に見える。なぜか?
第5波までは多くの知事から早期の緊急事態宣言の発出要請が相次いだ。が、第6波では様変わり。東京都の小池百合子知事は12日に開かれた全国知事会で「国は医療のひっ迫の度合いを重視したレベルにこだわらず、知事の要請に応じて緊急事態宣言を出すべきだ」と釘をさした。
その理由として緊急事態宣言のような厳しい行動制限には「医療提供体制のひっ迫だけではなく、社会活動の基盤を揺るがしかねない危険をはらんでいる」と指摘。要は「社会や経済に大きな混乱を生む緊急事態宣言を、国が勝手に決めるな」ということだ。小池知事は2020年4月と2021年1月には、早期に緊急事態宣言を出すよう国に求めてきた。
知事たちの態度が変わったのは、2021年1月から9月までの毎月にわたって緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が実施されてきたからだ。飲食業や宿泊業の中小企業を中心に、営業自粛で経営状況が急速に悪化。この上、2022年が前年同様に「毎月が緊急事態宣言」状態となれば、地域経済は大打撃を受けかねない。
さらにオミクロン株が感染しても軽症や無症状の人が多く、重症化しにくいという特性も、知事たちが緊急事態宣言に消極的な理由だ。過去のコロナ感染拡大で厳しいロックダウン(都市封鎖)を実施した海外も、オミクロン株の対応が変わってきた。
英国では4日にジョンソン首相が「経済活動を制限しなくても、ウイルスと共生する方法がある」と都市封鎖などの厳しい規制はしないと宣言。翌5日にはワクチン接種を完了した入国者には、出国前のウイルス検査を免除するなど入国規制も緩和している。
2021年11月に世界で初めてオミクロン株が確認された南アフリカでは、ワクチン接種完了率が人口の3割に満たないが、公共の場所でのマスク着用と1000人超の大規模集会が規制されているぐらいで経済活動は平常通りだ。それにもかかわらず同12月中旬からコロナの新規感染者数は減少を続け、現在ではピーク時の半分以下にまで下がっている。
こうした状況から、知事たちは「オミクロン株に緊急事態宣言は過剰反応」と判断しているようだ。松井一郎大阪市長や小池知事は、新型コロナウイルスの感染症法の分類を現在の2類から一般のインフルエンザと同じ5類に引き下げるよう口火を切った。
前の安倍・菅政権ではコロナ対策が後手に回ったことで支持率が急落しており、岸田首相は2類から5類への引き下げに慎重だ。これまでの緊急事態宣言は、知事たちに「早く出せ」と迫られて政府が重い腰を上げてきたが、今度は「攻守逆転」となりそうだ。国民はどちらの主張を支持するのだろうか。
文:M&A Online編集部