GoToトラベル、利用者200万人も「大手しか救済しない」

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菅義偉官房長官は2020年8月24日の定例記者会見で、政府の観光支援事業「GoToトラベル」の利用者が7月22日の開始から少なくとも延べ200万人に上ったと明らかにした。一見、好調のようだが、期待していた中小旅館・ホテルからは「大手の旅館・旅行代理店にしかメリットがない」との批判も出ている。

高級旅館・ホテルの利用が「お得」

理由は制度設計の「落とし穴」。GoToトラベルでは国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の半分に当たる額を支援する。1人1泊あたり上限は2万円で、連泊や利用回数の制限はない。ところが半額支援となると、高い宿泊施設を利用したほうが「値引額」は大きくなる。

1万円の宿に宿泊したら5000円値引きだが、4万円の宿なら2万円の値引きになる計算だ。「安く泊まれるうちに、普段は泊まれない高級旅館に泊まろう」と考える旅行客が増えるのも当然だろう。宿泊予約サイトの一休.comが発表した「GoToトラベルで売れている宿トップ100」の上位には露天風呂つき客室を備える高級旅館や都市型高級ホテル、高級リゾートホテルがランクインしている。

本来は真っ先に救済されなくてはいけないはずの中小旅館・ホテルにGoToトラベルの恩恵が回ってこない状況になっているのだ。そういう事情もあってか、同事業を登録した宿泊事業者は全体の半数にとどまっている。事業を所管する観光庁は8月21日までとしていた申請期間を延長した。

大手が「GoTo お断り」になる可能性も

もともと給付金には事業者ごとの枠が設けられており、過去の取扱実績や販売計画などに基づいて設定されるため、販売実績のある大手の給付枠は大きく中小事業者は小さい。制度自体が体力のある大手に有利となっているのだ。

中小の宿泊施設や旅行代理店では「事務処理が煩雑」と不評な上に、大手に利用客が流れている現状から申請をためらう事業者も増えている。GoToトラベルで恩恵を受けている大手でも感染予防のために客室の稼働率を半分程度に落としている宿泊施設も多く、「GoToトラベル混雑」に戸惑うケースもあるという。

高級旅館・ホテルとしてはリピーター客を確保したいが、GoToトラベルを利用するのは「半額で泊まれるから利用した」単発客が多い。客室稼働率を落としている状況だとGoToトラベル利用客で予約が埋まり、リピーター客が利用できないケースも懸念される。

航空機の早期割引料金のように予約枠を設けて、GoToトラベル利用者を制限する可能性もある。そうなれば旅行者から「泊まりたい宿が利用できない」との不満の声も上がるだろう。これから秋の大型連休を迎えるが、GoToトラベルの課題は山積している。

文:M&A Online編集部