「飛距離を伸ばしたい」「100を切りたい」「90を切りたい」といった目標を持つゴルフアーは少なくない。書籍やネットサイトでは、こうした希望を叶えるための指南情報があふれかえっている。そんな中「目かくし」と「寝返り」をキーワードにする異色の書籍「目かくしゴルフ」を執筆した人物がいる。
自らを「ゴルフ上達関節調律師」「ゴルフのスコアを上げる身体の使い方の専門家」と称する山本優子(27)さんがその人だ。使うべき関節を意識して正しく動かすことで、飛距離アップ、スコアアップが実現できるという。「少しの知識と少しの意識でスイングは変わる」と強調する山本さんに極意をお聞きした。
-一般的にはボールをよく見るように言われますが、なぜ「目かくし」なのでしょうか。
私は自ら開発した脱力関節調律という方法を用いた治療家で、痛みや不調を取るという仕事をしています。その際に大事にしているのが自立ということです。自立させるためにはご自身で体の知識をある程度を得て、それを意識して身体を動かすことが大事です。ゴルフの時も身体の使い方を意識して打ちましょうというのを今回この本で書きました。
目かくしというのは体に意識を向けてほしいとの思いから、目を閉じることで自分の体に意識が向くことを表現したものです。人は視覚から8割の情報を得ています。見てしまうと打ちたくなって力んだり、変な調整が入ってしまいます。目を閉じて自分の身体に集中すれば、うまくいきますよということを書いています。
-書籍では「仙骨」の重要性について触れられています。
仙骨は骨盤の中にある逆三角形の形をした身体の中心にある骨です。骨盤は土台で、その上にあるのが腰椎、胸椎、頚椎からなる背骨です。動きはすべて中心にある仙骨からスタートしており、仙骨から動かすことで身体が効率的に動くようになります。ゴルフでなくてもテニスや野球でも、さらに歩くにも立つにも座るにも、何でも仙骨から動かすことが大事です。
-仙骨から動き出すための身体の使い方や形などがあるのですか。
形にこだわると筋肉に力が入って動けなくなります。見た目でなくて自分に意識を向けることです。仙骨から動き出すという意識を持つことが重要です。こうすることで最小限の力で動けるようになります。
-最小限の力で動き出すことが飛距離アップにつながるのですか。
そうです。無駄な力はブレーキになっています。脱力をしてあげた方が速く動きます。実際に施術したほとんどの方はヘッドスピードが上がっています。
-ゴルフの指南書にはよくテークバックは手から動かすという記述がみられます。これは違っているということですか。
そうです。身体の構造からという意味でいうと違っています。実際に施術をされた方のビデオを撮りますと、明らかな変化があります。手から動き出して腰を捻ると、手先が回っているだけで身体はあまり捻れていません。
仙骨から動き始めることで大きく捻ることができます。仙骨から動きが始まって、少しずつ腰椎や胸椎を捻っていきます。背骨は24個ありますので、それらが下から一個ずつ回ることで動きが大きくなるのです。
-これは大きく振りかぶるということになりますが、振りかぶり過ぎると方向性が悪くなりませんか。
手から動き始めて振りかぶると、ヘッドのポジションが定まらないと思います。いつも同じところに振り上げるのが難しくなります。身体の中心から順番に捻った結果、大きな動きになっているだけですので、元に戻すと同じ所に戻ってきます。事実、施術した方はブレが少なくなることが多いようです。
-寝返りの重要性についても触れられています。
赤ちゃんは手足から寝返りはしません。身体の中心から動いています。これはゴルフのスイングと同じです。寝返りの練習をすればゴルフのスコアアップに役立ちます。
そもそも寝返りは疲労を回復するために行っている動作です。赤ちゃんは寝がえりを多くします。大人になると寝返りをあまりしなくなります。朝起きたら身体がだるく、疲労が抜け切れていないことはありませんか。寝返りができると子供の時のようにすっきりと起きることができます。
寝返りは寝ている間にかかる圧を分散することが目的です。また起きている間は利き腕があり、左右差によって歪が生まれます。寝ている間に寝返りを打つことで、歪をリセットしています。寝返りは生きるための術なのです。
もともと持っていたこうした能力を、日々の癖だとかスマートホンの操作などで失っています。もう一度赤ちゃんの動きを取り戻すことで、いいパフォーマンスを回復することができます。
【山本優子さん】(https://www.kansetsutyoritsu.com/)
naturaca代表、ゴルフ上達関節調律師、脱力関節調律®︎開発者
大学で医療と運動指導について学び、柔道整復師と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーを取得。
2015年に大学卒業後、健康産業を手がける企業に就職。さまざまな経験を経て、脱力関節調律®︎を独自に開発。
2018年にnaturacaを設立し独立。2019年4月に目かくしゴルフを出版するとともに、一般社団法人日本脱力関節調律協会を設立、代表理事に就任。1992年生まれ、神奈川県出身。
取材・文:M&A online編集部