「ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」などのレストランを運営するグローバルダイニング<7625>の2021年12月期第2四半期の売上高が前期比92.3%増の47億1,400万円となりました。コロナ前の2019年12月期第2四半期の売上高は46億8,300万円でした。2021年1月から6月までの売上高は、コロナ前比でも0.7%上回ったことになります。
緊急事態宣言下でも時短・休業要請に応じず、東京都の時短命令は違憲・違法だとして訴訟を起こしたグローバルダイニング。コロナ前比での売上増という実績を残しました。
グローバルダイニングの2021年12月期第2四半期の営業利益は4億5,900万円となりました。前年同期は3億5,400万円の営業損失。2019年12月期第2四半期も500万円の営業損失を計上していました。
黒字要因の一つとして、新型コロナウイルス感染拡大で店舗数は減少したものの、1店舗当たりの売上高が増加したことがあります。
下の表は2019年、2020年、2021年の1月から6月までの月次売上高、店舗数、1店舗当たりの売上高、そしてそれぞれの年の比較です。2020年は1店舗当たりの売上高が平均で850万円程度まで落ち込みました。2019年比で46.9%もの減少です。この年の店舗数は前年とほとんど変わっていません。
■グローバルダイニング国内店舗月次売上高(単位:千円)
2019年1月 | 2019年2月 | 2019年3月 | 2019年4月 | 2019年5月 | 2019年6月 | 合計 | |
売上高 | 655,824 | 636,143 | 854,279 | 781,203 | 774,550 | 746,666 | 4,448,665 |
店舗数 | 46 | 46 | 46 | 46 | 46 | 46 | 46 |
1店舗当たりの売上高 | 14,257 | 13,829 | 18,571 | 16,983 | 16,838 | 16,232 | 16,118 |
2020年1月 | 2020年2月 | 2020年3月 | 2020年4月 | 2020年5月 | 2020年6月 | 合計 | |
売上高 | 646,133 | 574,119 | 370,472 | 119,522 | 233,708 | 384,684 | 2,328,638 |
店舗数 | 45 | 45 | 46 | 46 | 46 | 45 | 46 |
1店舗当たりの売上高 | 14,359 | 12,758 | 8,054 | 2,598 | 5,081 | 8,549 | 8,566 |
1店舗売上高2019年比 | 100.7% | 92.3% | 43.4% | 15.3% | 30.2% | 52.7% | 53.1% |
2021年1月 | 2021年2月 | 2021年3月 | 2021年4月 | 2021年5月 | 2021年6月 | 合計 | |
売上高 | 491,617 | 634,985 | 693,962 | 678,145 | 772,062 | 726,404 | 3,997,175 |
店舗数 | 41 | 41 | 41 | 41 | 40 | 40 | 41 |
1店舗当たりの売上高 | 11,991 | 15,487 | 16,926 | 16,540 | 19,302 | 18,160 | 16,401 |
1店舗売上高2019年比 | 84.1% | 112.0% | 91.1% | 97.4% | 114.6% | 111.9% | 101.8% |
1店舗売上高2020年比 | 83.5% | 121.4% | 210.2% | 636.6% | 379.9% | 212.4% | 191.5% |
※グローバルダイニング月次報告書より筆者作成
グローバルダイニングはコロナ禍で不採算店を撤退し、稼げる店舗に絞り込みをしました。2021年6月の段階で40店舗まで減らしています。そして、1店舗当たりの売上高が2019年を上回るようになったのです。緊急事態宣言が延長された2021年5月は1店舗当たりの売上高が2019年比で14.6%も上昇しています。また、緊急事態宣言が解除された2021年6月の売上高も2019年比で11.9%も上回っています。この時期、人々は営業が再開されたレストランに足を運べる自由度が上がりました。それでも、グローバルダイニングの店舗に集まっている様子がうかがえます。
不採算店をなくし、1店舗当たりの売上高が上がったことで、皮肉にもコロナ禍において利益の出やすい体質へと変化したのでした。
グローバルダイニングは、東京都を対象とした4度目の緊急事態宣言でも営業を継続する意向を示しています。酒類提供制限にも従わず、営業スタイルもこれまでと変わらない予定です。
グローバルダイニングは2021年1月に発令された2回目の緊急事態宣言下で東京都の時短要請に従わず、時短命令を出されました。このとき、命令を出されたのは32施設で、そのうちグローバルダイニングの店舗が26施設でした。グローバルダイニングを狙い撃ちしたかのような命令に対して、東京都は大手企業の社会的影響力の強さから、他の会社の店舗も20時以降の営業継続をしかねず、名指しで命令する優先性が高かったとしています。グローバルダイニングは東京都の時短命令に応じなかった店舗に対して、過料が課される可能性もあります。
グローバルダイニングが起こした訴訟では、クラウドファンディングで費用を募り、2,500万円以上を集めました。目標額1,000万円に対して、2倍以上の支援を集めたのです。飲食店を応援したいとする声は根強く、注目度の高い裁判となっています。
この会社の特異性は、都の命令に応じず従業員が一致団結して営業へと突き進む姿にあります。組織が一枚岩となっている背景には、創業当時より実力主義を貫いており、アルバイトを含めた従業員すべてに店舗の収益を上げることを至上命令として経営してきたことがあります。外食企業の多くがホールディングス化を進めていますが、グローバルダイニングは買収によって業態の幅を広げることなく、自力で時流を読んでカフェや和食など集客が難しい業態でも大型店舗での成功を収めてきました。
今期は宿泊複合施設という新たな事業を展開します。栃木県那須エリアで、宿泊・レストランおよびエンターテインメント施設の構築と運営を行うのです。事業開始年度は2021年度中。これだけの厄災に見舞われる中でも攻めの姿勢を崩さないグローバルダイニングに注目が集まっています。
文:麦とホップ@ビールを飲む理由