「外食」産業に他業界から熱い視線 コロナ後を見越した戦略か

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外食・フードサービス業界でM&Aが復活の兆しを見せている。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って同業界では2020年、2021年と2年連続してM&A件数が減少していたが、2022年は9月末時点で前年を2件上回り、10月に入っても勢いは止まらず、2020年の実績まであと2件に迫っている。

同業界はコロナ禍で業績悪化に苦しむ企業が多く、売却対象となる企業や事業は少なくない。一方、買い手は外食・フードサービスが全体の半数を超えているが、他業界企業による買収も半数近くに達しており、コロナ後を見据えた同業界での事業展開への関心の高さがうかがわれる。

現在、日本では外国人の訪日個人旅行が解禁されるとともに、ビザの免除や1日の入国者数の上限撤廃、さらには円安が重なり、訪日外国人旅行客の急増が見込まれている。今後、外食・フードサービス業界への関心は、ますます高まりそうだ。

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3年ぶりに増加

M&A Onlineが、東証適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について集計したところ、外食・フードサービス業界でM&Aが増加していることが分かった。

件数はコロナ前の2019年に31件に達し、2013年から2022年までの10年間で最多となっている。翌2020年はコロナの影響で18件に減少、さらに2021年は13件に落ち込んでいた。

2022年は9月に3件の案件があり、この時点で前年実績を上回り、10月の1件と合わせ16件(10月14日時点)にまで達している。

この16件の取引金額は617億円で、2013年以降の10年間では2014年の1137億円に次ぐ2位と高い水準となった。ただ、金額を引き上げたのは、プレナス<9945>が、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化する案件(金額は最大598億円)で、この1件を除けば、少額の案件と金額非公表案件が多くを占めた。

対象企業の業績は、振るわないところが多く、赤字のケースもあることから、売り手企業の業績の建て直しや、中核事業への集中などが売却の要因となっているようだ。

【外食・フードサービス業界のM&A件数の推移】

小僧寿しが積極策を

また目立った動きとして、この間に2社を買収した小僧寿し<9973>の案件がある。同社は7月に、JFLAホールディングス<3069>傘下で飲食店経営のアスラポート(東京都中央区)が会社分割して設立する同名の新会社アスラポートを買収したのに続き、10月にはJFLAホールディングスの傘下企業からメキシカン・ファストフードTaco Bell事業を取得した。

金額が最も多かったのは、天満屋ストア<9846>が名物駅弁「桃太郎の祭ずし」で知られる三好野本店(岡山市)を子会社化した案件で、金額は7億500万円だった。

文:M&A Online編集部