【JPモルガン】知っているようで知らない、外資系金融機関まとめ <4>

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(東京・丸の内)

「JPモルガン」は米国ニューヨークに本拠地を持つ金融機関。グループの総称は「JPモルガン・チェースグループ」であり、JPモルガンはJPモルガン・チェースグループの投資銀行という位置づけになります。その前身は1871年にニューヨークで設立された「ドレクセル・モルガン&カンパニー」にさかのぼります。

 その後、ドレクセル・モルガン&カンパニーは1895年に「JPモルガン&カンパニー」となり、「モルガン財閥」を築き上げます。ところが、1929年に始まる世界恐慌で大きな打撃を受け、「JPモルガン&カンパニー」は投資銀行である「モルガン・スタンレー」とに分割されました。

 それから70年ほど経った2000年、「JPモルガン」は「チェース・マンハッタン」と経営統合し、「JPモルガン・チェース」となり、投資銀行を再スタートさせました。ちなみに、グループの「チェース銀行」は米国におけるリテール銀行業務を行っています。

日本におけるJPモルガンの歴史 

 日本でのJPモルガンの歴史は関東大震災の翌年(1924年)、日本政府が初めて発行した震災復興公債(1億5000万ドル)を引き受けたことに始まります。この功績が認められ、以後、日本でも事業を拡大していきました。

 ちなみに、JPモルガン・チェース銀行の前身であるチェース・ナショナル銀行は、第2次世界大戦の直後(1947年)に外国銀行として初めて東京支店を開設しています。そうしたJPモルガンの歴史を振り返ってみると、下表のようになります。

JPモルガンの歴史
1871 「ドレクセル・モルガン&カンパニー」をニューヨークで設立
1895 「JPモルガン&カンパニー」となり、米国債を6200万ドルで引き受け
1924 JPモルガン、関東大震災の震災復興公債1億5000万ドルを日本政府から引き受ける
1929 世界恐慌で打撃を受け、グラス・スティーガル法(銀行と証券の兼営を禁止する法律)の規定により、投資銀行の「モルガン・スタンレー」と分割
1947 チェース・ナショナル銀行が外国銀行として戦後初めて東京に支店を開設
1959 ギャランティ・トラスト・カンパニー・オブ・ニューヨークと合併し、モルガン・ギャランティ・トラストに(その後、持株会社を設立し、再び社名はJ.P. モルガン&カンパニーとなる)
1961 JPモルガンの銀行部門であるモルガン銀行が東京に駐在員事務所を設立
1969 モルガン銀行駐在員事務所、東京支店に昇格
1972 グローバルな資産運用の調査拠点として、J.P.モルガンが日本での活動を開始
1974 チェース・マンハッタン・コーポレーションとして東京証券取引所に株式公開
1985

モルガン信託銀行、チェース信託銀行、ケミカル信託銀行を東京に設立
1987 JPモルガン証券東京支店を開設
1992 ケミカル・バンキング・コーポレーションとマニュファクチャラーズ・ハノバー・コーポレーションの合併に伴い、両行の東京支店統合
1995 JPモルガン・インベストメント・マネージメント・インク東京支店を開設
1996 チェース・マンハッタン・コーポレーションとケミカル・バンキングの合併に伴い、両行の東京支店を統合
1997 JPモルガン証券、東京証券取引所の会員権取得
2000 「チェース・マンハッタン」と経営統合し、「JPモルガン・チェース」となり、投資銀行を再スタートさせる
2001 JPモルガン証券東京支店、ジャーディン・フレミング証券東京支店およびチェース証券東京支店より営業譲受
モルガン銀行とチェース・マンハッタン銀行を統合し、JPモルガン・チェース銀行誕生
2002
チェース信託銀行がモルガン信託銀行に業務の一部(資産流動化関連業務)を譲渡し、モルガン信託銀行として営業開始
2004 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーとバンク・ワン・コーポレーションの合併に伴い、JPモルガン・チェース銀行東京支店がバンク・ワンの東京支店の全営業を譲受
2006 JPモルガン・フレミング・アセット・マネジメント・ジャパン、JPモルガン・アセット・マネジメントに社名変更

モルガン信託銀行、JPモルガン信託銀行に社名変更
JPモルガン・インベストメント・マネージメント・インク東京支店、JPモルガン信託銀行に営業譲渡
日本における各社、オフィスを千代田区丸の内の「東京ビルディング」に移転
JPモルガン証券東京支店、組織改編によりJPモルガン証券として営業開始
2008 JPモルガン証券、ベアー・スターンズ証券東京支店より営業譲受
JPモルガン・ワールドワイド・セキュリティーズ・サービス設立
2011 JPモルガン・ワールドワイド・セキュリティーズ・サービス、JPモルガン証券と合併

(JPモルガンホームページをもとに作成)

日本企業関連の主なM&A

 現在、JPモルガンは日本でJPモルガン証券、JPモルガン・チェース銀行東京支店、JPモルガン・アセット・マネジメントの3社が事業展開しています。どの法人も、東京都千代田区丸の内に本拠地を構えています。

 事業内容は、「バンキング」「マーケッツ&インベスター・サービス」「アセット・マネジメント」の3種に分かれ、M&Aのアドバイザリー業務は3種の事業内容のうち「バンキング」が担っています。日本企業による大型M&Aやクロスボーダー案件、また投資ファンドのディールにおいてなど、さまざまな案件で財務アドバイザーとしてかかわり、多面的で複雑なディールにおいても最適なソリューションを提供しています。

 日本企業関連のM&A案件を見ていきましょう。

 2017年の日本企業関連の大型案件上位10社(公表案件)のうち、次の2件のM&Aについて、被買収側アドバイザーとしてJPモルガンがかかわっています。

日付 被買収側(国籍) 買収側(国籍) 買収側最終親会社国籍 ランクバリュー(億円) 被買収側マクロ業種
2017.1.9 アリアドファーマシューティカルズ(米国) キク・マージャー(米国) 日本 6,148 ヘルスケア
2017.4.6 スノコLP-コンビニエンスストア(米国) セブン-イレブン(米国) 日本 3,663 エネルギー電力

 (トムソンロイター リーグテーブルをもとに作成)

 2017年のIN-OUT案件のアドバイザーとしてはランクバリューベースでトップ(1兆5297億円)。同年の業種別のアドバイザーランキングでは、「ヘルスケア」業種でゴールドマン・サックスに続く2位になっています(8413億円)。

 こうしたJPモルガンのM&Aアドバイザーについて、ランクバリューベースの状況をより詳細に見ていきましょう。

 公表案件では、2017年は6位。トップの野村証券が4兆1159億円で、JPモルガンは1兆6415億円でした。一方、完了案件では7位。トップの三菱UFJモルガン・スタンレーが4兆1785億円で、JPモルガンは1兆9067億円でした。

 ランクバリューベースではなく、案件数でのランキングを見ると、JPモルガンは公表案件では15件で24位。完了案件では23位。トップのみずほフィナンシャルグループが公表案件で194件、完了案件で178件ですから、JPモルガンがいかに金額の大きな案件について対応しているのかが見てとれます。

文:M&A Online編集部