知っているようで知らない「一時帰休」とは、JR東も初めて実施

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JR東日本が7月から「一時帰休」実施へ(写真は山手線と京浜東北線)

新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化で昨年来、産業界では希望(早期)退職者を募る動きが広がりを見せている。こうした人員削減策とは異なり、「一時帰休」で対応する企業も少なくない。ただ、一時帰休といっても、あまり耳慣れない。一体、どんなものなのだろうか?

雇用継続し、給与も一定に保障

希望退職は会社側が募集人数や募集条件(年齢、勤続年数など)、募集期間を決めたうえで、対象者の中から退職者を募る。会社都合による退職で、応募者には所定の退職金に割増金を上乗せ支給し、再就職支援も行うのが一般的。

希望退職は不況による業績低迷などを受けて実施されるケースがほとんどだが、目先の業績にとらわらず、中長期的な観点から人員のスリム化や人員構成の見直しを目的に行われる場合もある。コロナ禍が直撃した2020年は希望退職を募る上場企業が90社を超え、約1万8000人が会社を去った。

これに対し、雇用契約を維持したまま、従業員を一時的に休ませるのが「一時帰休」だ。もちろん、休業期間中も給与は支払われる。その額は労働基準法の定めで平均給与の6割以上の休業手当が保障される。

緊急事態宣言などを受け、産業界では在宅勤務(リモートワーク)が奨励されているが、一時帰休とはまったくの別物。一時帰休は仕事をせず、自宅待機するイメージだ。有給休暇が減ることもない。

一時帰休の過ごし方として、企業によっては副業が認められる場合もあるかもしれない。

コロナ禍で昨年、減産に伴う操業短縮に迫られた鉄鋼、自動車、電機や利用者が“蒸発”した航空会社などで一時帰休の動きが相次いだが、ほとんどの企業で国の雇用調整助成金を活用することで給与を減額せず支給したと見られる。

JR東、7月から初の一時帰休

7月1日から一時帰休を行うのはJR東日本。9月30日までの間、本社部門に勤務する社員約1800人(管理職を含む)を対象に、1日あたり約200人が交代で休む。コロナの影響で厳しい経営状況が継続し、一時的に業務量が減っている。JR東日本として一時帰休の実施は1987年の国鉄民営化で発足後初めて。

JR各社は鉄道利用者の減少などで大幅な業績悪化に直面している。JR東海の一時帰休は1月から6月末まで半年間及んだ。2月から一時帰休を実施している西日本は6月末で終了する予定だったが、7月末まで延長を決めた。

一時帰休と混同されがちなのがレイオフ(layoff)。これが意味するのは「一時解雇」。業績回復後の再雇用を前提として一時的に解雇するもので、雇用契約が継続する一時帰休とは大きく異なる。レイオフは欧米などで一般的だが、日本での事例はまず聞かない。

文:M&A Online編集部