【株主総会】渦中のフジテック・東洋建設が急転直下、議案撤回

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株主総会が注目を集める…フジテックと東洋建設(いずれも都内で撮影)

株主総会の行方に関心が集まっていたエレベーター大手のフジテック、海洋土木大手の東洋建設が6月23日、土壇場の攻防劇を繰り広げた。賛成か反対か、株主の判断が注目されていた議案が急転直下、取り下げられたのだ。

総会1時間前に社長再任案を撤回

フジテックは23日午前9時、同日の定時株主総会(滋賀県彦根市)で賛否を諮る予定だった内山高一社長の取締役再任案を撤回すると発表した。株主総会が始まる1時間前という異例の事態となった。

撤回したのは第5号議案「取締役10名選任の件」のうち、内山氏を取締役候補とする議案。香港投資ファンドのオアシス・マネジメントが創業家の内山家と会社側との間で「疑わしい取引がある」と主張し、内山氏の再任案に反対するよう呼び掛けていた。物言う株主として知られるオアシスはフジテック株の9.73%を持つ。

米国の大手議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)、グラス・ルイスの2社は内山社長の再任案について株主に反対を推奨。同氏の再任案が承認されない事態も予想された。

フジテックは内山氏の再任案撤回の理由として、第三者委員会の追加調査でオアシスが指摘した点について問題がないことが確認された際には、改めて内山氏の取締役就任の是非を株主に諮るべきと考えたため、としている。

フジテックは株主総会後の取締役会で岡田隆夫副社長の社長就任を正式決定した。取締役を退任した内山氏は「会長」に就いた。内山氏は1978年に取締役に就任し、常務、専務、副社長を経て2002年に社長に昇格した。創業家出身者として取締役在任は40年を超え、社長歴も20年に及んでいた。

総会前日、「防衛策」を取り下げ

6月24日に定時株主総会を都内で開くのは東洋建設。その総会前日の23日、大規模買付行為に対する対応方針にかかる議案を取り下げると発表した。

対応方針は東洋建設に買収を提案している任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(東京都港区)を念頭に置いた事実上の買収防衛策で、ヤマウチ側の持ち株比率を低下させるために新株予約権の無償割り当てなどが想定されていた。

このケースでもISS、グラス・ルイスの2社がいずれも買収防衛策に反対の議決権行使を行うことを推奨していた。

東洋建設をめぐっては前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスによるTOB(株式公開買い付け)が5月に不成立に終わっている。ヤマウチ側はインフロニアに対抗する形でTOBに名乗りを上げ、現在、東洋建設株の27%余りを保有する筆頭株主となっている。

それが一転して議案を取り下げた理由は何か。株式の追加取得について、2023年5月24日までの間、東洋建設経営陣が同意しない限りは一切行わないことを誓約したものと理解したことなどを挙げている。

そのうえで、東洋建設は「真摯にヤマウチ側との協議に臨むという当社の姿勢を示すためにも、総会において議案を上程せず、取り下げることにした」としている。

総会後にスタートする東洋建設の新経営陣がTOBの申し出についてどう最終判断するのか。長丁場のせめぎ合いとなりそうだ。

文:M&A Online編集部