アサイーのフルッタフルッタは債務超過による上場廃止待ったなしか

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渋谷ヒカリエ地下3階にあるアサイーカフェ

アサイードリンクの販売やカフェを運営するフルッタフルッタ<2586>が、上場廃止の崖っぷちに立たされています。2020年3月期中に債務超過を解消しなければ上場廃止となりますが、第3四半期の時点で10億円の債務超過状態。純損失も2億9000万円計上しており、穴の開いたバケツで沈みゆく船から水をかき出しているように見えます。

救いの手を差し伸べているのがEVO FUND(本社:ケイマン諸島)です。1月14日に577万株分の新株予約権を割り当てました。調達額はおよそ2億9000万円です。新株予約権の行使価額は1株当たり50円。発表前の株価は300円台で推移していました。なりふり構わず資金調達に奔走するフルッタフルッタですが、債務超過を解消する7億円以上の資金を得る目処はついていません。

この記事では以下の情報が得られます。

新株予約権発行でファンドが設けるカラクリ
・フルッタフルッタの業績推移と泥沼化した理由

アサイーブームの頂点でエグジット

フルッタフルッタが東京証券取引所から、上場廃止の猶予期間入り宣告がなされたのは2019年6月27日でした。同社は2019年3月期に7億9500万円の純損失を計上。7億7100万円の債務超過となったのです。6月6日に768円の高値をつけていた株価は、7月1日に381円まで50%超下落しました。

業績の推移を見れば、遅かれ早かれ債務超過になることは織り込み済みだったようにも見えます。4期連続で営業赤字の状態だったのです。

〇フルッタフルッタ業績推移(百万円)

2014年3月期 2015年3月期 2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期
売上高 2,873 3,344 2,571 1,619
1,105
1,222
営業利益 246 106 △474 △507 △537 △752
純利益 153 201 △683 △591 △586 △795

決算報告書より筆者作成

フルッタフルッタ業績低迷の根っこにあるのはアサイーブームの終焉によるものです。下のグラフはGoogleトレンドで「アサイー」の検索数を調べたものです。2014年6月にピークを形成してから、減少し続けてます。売上はそれに呼応するように、2015年3月期に33億4400万円の頂点を迎えました。その後売上は半分以下の水準まで縮小し、営業利益は一度も出ない状態へと転落しています。

「アサイー」のGoogleトレンドを抜粋

フルッタフルッタの上場日は2014年12月17日。ピークを迎えたころに上場したことになります。上場時の株主にはジャフコ<8595>などが名を連ねており、ブームの終わりを迎える前にエグジットに成功したといえます。


フルッタフルッタは、アサイーの他にアグロフォレストリー・カカオ豆の販売も行っています。これは森林伐採後の荒廃した土地に、自然の生態系に沿った形でカカオ豆などの農作物を栽培するというもの。環境に配慮した商品需要の高まりを背景に、大手菓子メーカーなどがアグロフォレストリー・カカオ豆を採用した商品を売り出しました。しかし、需要は伸びずに2019年3月期のこの部門の売上高は3億6000万円に留まっています。アサイーブームが収束する裏で、新たな収益柱を立てられなかったことが今の苦境を招いたといえます。

カフェ事業においては、国内の渋谷ヒカリエ店の他に、海外初となるアサイーカフェ2号店を2019年1月台湾に出店しました。しかしながら、出店場所の「微風南山アトレ」そのものの集客状況が悪く、店舗オペレーション構築にも時間がかかったため、早くも2019年3月期に減損損失を計上しています。国内のブーム終了や、台湾の健康志向などを背景に海外への出店。これは一足飛びの印象がぬぐえません。

アサイーカフェ台湾
アサイーカフェ台湾店の様子(画像はプレスリリースより)

2019年に一大ブームを巻き起こしたタピオカ店は、流行がやってくる前でも地方のショッピングモールなどに店舗を構えていました。フードコートや観光地、動物園、水族館などの施設は、一定の客数が見込めます。アサイーカフェも、地方都市などに小型の店舗を構えて小さく稼ぐ方法をとっていたら、今とは違う姿になっていたかもしれません。

台湾に出店した費用のうち13億円は、マイルストーン・キャピタル・マネジメント(本社:東京都千代田区)から新株予約権の発行によって調達したものでした。その資金をいわば溶かしてしまったことになります。

EVO FUNDの金の生る木になったフルッタフルッタ

上場廃止を回避すべく、2020年1月にEVO FUNDを引受先とする新株予約権を発行しました。潜在株式数は577万5200株。調達額は2億8876万円で、行使額は50円。このような資金調達をした場合、株価は確実に下がります。そして、ファンドは確実に儲けを出すことができます。債務超過に陥った企業が、金融機関から借り入れができないときなどによく使われる手法です。簡単にその仕組みを説明します。

今回の新株予約権の行使価額は50円でした。フルッタフルッタの株価は300円台でした。ファンドが株価300円で100万株の空売りを仕掛けたとします。3億円の現金と100万株の借株が残ります。この100万株を返却するため、新株予約権を行使すると、100万株を5000万円(行使価格50円)で調達できます。差額は2億5000万円で、これが儲けになります。このようにして安定した儲けを出すことができるのです。しかし、大量の空売りをされ続けるので、株価は下落します。フルッタフルッタは2月7日に199円まで下落しました。

新株の発行は300%を超える希薄化を引き起こすと、上場廃止基準に抵触します。今回の発行でおよそ296.2%と抵触ぎりぎりの希薄化が生じました。また今回の新株予約権行使だけでは債務超過解消が見込めないことから、DESなども検討しているようです。

フルッタフルッタに残された時間はごくわずかです。7億円以上もの資金調達がこれから可能なのか。その動向に注目が集まっています。

麦とホップ@ビールを飲む理由