旧村上ファンド系の「シティ」が動きを活発化、ジャフコが新たな標的に

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写真はイメージです…(東京証券取引所)

旧村上ファンド系の投資会社による大量保有報告書の提出がここへきて活発化している。提出件数は5、6、7月各3件だったが、8月はすでに9件(8月24日時点)を数える。8月にはベンチャーキャピタル(VC)最大手、ジャフコグループ<8595>の株式を新規に5%超保有したことが判明し、その後、11.87%まで買い増した。

ジャフコに500億円の自社株買いを要求

旧村上ファンド系の投資会社を代表する存在のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)の関与を調べたところ、2022年に入って大量保有報告書の提出件数は累計34件。月別では1月1件、2月と3月各2件、4月11件、5~7月各3件。8月はここまで9件と、夏の到来とともに勢いを取り戻した格好だ。

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ジャフコグループ株式の5%を超える新規保有は8月9日、シティが提出した大量保有報告書で分かった。保有比率は6.54%(共同所有分を含む)で、15日には11.87%まで買い増したとする変更報告書を提出した。

標的となったジャフコは国内におけるベンチャーキャピタルの草分け企業で、1973年に設立。投資先上場会社数は累計1019社(2022年3月末)に上る。このうち日本企業は811社で、海外企業の上場も200社以上かかわっている。

シティ側はジャフコに対し、500億円規模の自社株買いを要請するとともに、今後、保有比率を51%まで高める可能性を示唆している。これに対し、ジャフコは大量買い付け行為への対抗措置として新株予約権の無償割り当てなどを検討する方針を発表し、対決姿勢を鮮明にしている。

記憶に新しい西松建設・大豊建設との対立

シティ絡みの最近の案件で思い出されるのが西松建設<1820>、大豊建設<1822>を巡る株式の大量取得だ。いずれも巨額の売却益を手にしたとされる。

西松建設ではシティの保有比率がピーク時約25%に達し、株主還元などを突きつけられた。最終的に、シティ側が西松による自社株買いと伊藤忠商事の株式取得に応じる形で全保有株式を売却し、手じまいしたのが昨年12月のこと。

大豊建設でも同様に、シティの保有比率が40%近くに達し、事実上、経営の主導権を握られる状態になった。こうした中で、九州の企業グループの麻生(福岡県飯塚市)がホワイトナイト(白馬の騎士)として、約400億円の第三者割当増資を引き受け、大豊建設を7月に子会社化。一方、大豊建設は増資で得た資金を原資とし、自社株買いを行い、これにシティが応じる形で決着をみた。

こうした西松建設、大豊建設の経緯もあるだけに、ジャフコと旧村上側の攻防が注目される。

新規保有は今年、6銘柄

現在、シティの保有比率が10%を超える銘柄はほかに、東亜建設工業<1885>(10.35%)、中国塗料<4617>(12.5%)、コスモエネルギーホールディングス<5021>(13.35%)、セントラル硝子<4044>(27.44%)。

また、今年に入ってシティが新規保有したのは今回のジャフコをはじめ、コスモエネルギー、ホシデン<6804>(5.03%)、住友大阪セメント<5232>5.08%、クレディセゾン<8253>(5.06%)、日清紡ホールディングス<3105>(5.12%)の6銘柄ある。

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文:M&A Online編集部